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日刊サイゾー トップ > エンタメ  > アンジャ渡部の復帰番組をじっくり味わう
『チャンスの時間』は、文字通りにチャンスの時間だった

アンジャッシュ渡部建の復帰番組をじっくり味わう お笑いファンとの距離を縮めた新境地

渡部のグルメ知識を封じ、芸人の力を引き出したノブの無茶振り

 さあ、ここからが本編。この日、渡部がノブに相談したい内容は、「これから、どういうテンションでテレビに出ていけばいいか?」という悩みであった。もっと言えば、どういう芸風で、どんな仕事をしていけばいいか? という相談だ。

「僕、やっぱりロケだと思うんですよ、スタートって。あれはできますかね? 高田純次さんみたいな、カメラの下から出てきて『どうも、○○です』(例:『どうも、ジョニー・デップです』)みたいな」(ノブ)

 というわけで、高田純次的リポに挑戦することとなった渡部。

ノブ 「中継先の渡部さ~ん!」

渡部 「どうもー、渡部でーす!」

ノブ 「違う、違う! 聞いてました? 高田純次さんって、1回も『現場の高田純次です』って言ったことないです」

渡部 「確かに、確かに……」

 ここで、ノブは渡部に悪いアドバイスを与えた。

「今こそ、攻めたほうがいいんですよ。おもしろ俳優。ヒントあげたんだから」(ノブ)

 上記のフリを受け、渡部はリポートに再挑戦した。

ノブ 「現場の渡部さ~ん!」

渡部 「どうもー、現場の東出昌大でーす」

ノブ 「違う、お前がそういうことすな! 誰をイジっとる!?」

渡部 「すいません、全然わかんない。……東出さん関係の皆様、すみませんでした」

 理不尽すぎて地獄だ。起こした騒動が騒動だけに、ノブのおかしなフリにツッコむことができず、格下キャラのようになって戻ってきた渡部。そもそも、「高田純次みたいなリポートをしろ」(ノブ)「どうも、東出昌大です」(渡部)という流れが、完全にイカれている。

 ただ、渡部とリポートといえば親和性は高かったはず。彼の本領の1つは、まさしく食リポなのだから。

ノブ 「食リポが絶品なので、そのへんをまたするつもりは?」

渡部 「もちろん、やらせてもらうなら全力で……」

 というわけで、即興のグルメリポートが始まった。渡部がリポートするのは、ロケ弁の代名詞・金兵衛の「銀だら西京漬け焼き弁当」である。

「今日は金兵衛のお弁当ということで。本当にテレビ界隈では昔から愛されてる弁当なんですけども。実際の店舗は代々木八幡にあるんですけど、ここもすごく行列ができていて」

「じゃあ、開けますね。……どうですか。抗菌シートも取り入れるの早かったんです、金兵衛さん。コストかかるんですけども、こういう気遣いが素晴らしいですねえ」

「今日は銀だらの西京焼きですかね。いただきます。……もう、ホロホロのもう1つ上、本当にとろけるような柔らかさですよね」

 さっきまで気の毒なくらいの反省顔だったのに、弁当を手に取った瞬間、人が変わったように饒舌になる渡部。口数が少ない反省顔→饒舌食リポへと大胆にスイッチした。水を得た魚とは、このことである。まさに、芸は身を助ける。まるで、往年のJ-WAVEみたいだったし、「もはや、弁当が渡部の本体?」という感すらあった。ただの西京焼きでここまでしゃべれるのは驚きだし、「代々木八幡」という地名を出すあたり、彼はまだ鈍っていないのだと確信できた。

 自粛前は芸人として否定的に見られることの少なくなかった彼の食リポが、時間を空けることで味わい深いものになったのだから、世に人生を見せて生きる芸人らしい変遷だ。反面、こういう持ち場で金兵衛の知識をひけらかすいやらしさは、渡部の鼻につくところでもあった。

 ノブは渡部に変化を求めた。

「まるで違う! なんか、流暢にやっとったのう。昔と今のお前は違うのう? じゃあ、食リポも変えんとあかんな。なんか、弁当を知ってるみたいに言ってたなあ、偉そうに。最近、テレビ局に行ってないわけやろ? 最近のテレビ局の弁当は知らんわけや。食リポの最初はそれを言わないと」(ノブ)

 ノブのダメ出しを受け、渡部は食リポに再挑戦した。

「さあ、久しぶりにテレビ局に来たんでね、何が何だかわからないですけど。金兵衛ですか?」

「じゃあ、さっそくいただきますか。(抗菌シートを箸でつまみ)こういうのが最近のお弁当にはあるんですか? 僕の頃はなかったなあ……。じゃあ、さっそくいただきます(と言って、抗菌シートを食べる)。あ、これ違う? あっ、抗菌シート! 抗菌シートがあるんですか、最近のお弁当は。助かる~」

「えーっ、めずらしい! 魚焼いてるんですか、最近のお弁当は? ありがたいなー、焼いてくださってるんだ。いただきます。……(味わって)あ、もう全然わかんない」(渡部)

 “時代に取り残された渡部”のテイで行われた食リポに、笑いを禁じ得ない。抗菌シートを詳細に説明した前半の食リポが盛大なフリとなり、真顔で抗菌シートを食べる後半の食リポの破壊力が一層増している。しかも、シートを食べる際の渡部が見事だったのだ。嫌そうな顔をまったくせず、初見のおかずを食べるときみたいな顔つきで試食した。まさに、コント師の演技力だ。

 続く「魚焼いてるんですか、最近のお弁当は?」というリポも、意味不明すぎて面白い。謹慎前は生魚が入っていたわけじゃないだろうに。

 これは、知っている知識をすべて閉ざし、言われるがままに行った自虐食リポである。前半の食リポで見せた事細かな知識と完成度の高さがフリとなり、後半の食リポが俄然面白くなったのだ。無茶振りによく対応できていたし、コント芸人としての地力も垣間見えた。いわば、前半はタレントとして、後半は芸人としての強さが出た食リポだった。少なくとも、筆者は渡部でこんなに笑ったのは初めてだったし、面白さでは騒動以前より今のほうに軍配が上がる。

 そして、食リポが終わるとすぐ伏し目がちになる渡部。この表情が芸なのかリアルかは見当もつかないが、“反省顔”は彼の新しい武器になり得る。普段はショボン顔なのに、振られると急に高クオリティの食リポを行う芸風。以前はプライドの塊のようだった渡部が、“反省顔”という新たな技を生み出したところに絶妙な面白さがある。

 加えて、千鳥によるイジりだ。渡部の持つ達者な部分は決してプラスのみに働かず、鼻につく要素でもあった。しかし、千鳥の無茶振りによって、なんだかんだ芸人として好かれる方向へ誘導されていっているのだ。騒動以前にあったマルチタレント臭を封じたことで、埋もれていた芸人としての才能を世に知らしめた感がある。

 復帰後の渡部を見て、「いつまで、このお通夜モードでテレビに出るのだろう?」と思っていたが、こういう輝き方も選択肢の1つかもしれない。

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