2022年の賃上げ、上昇率たった1.9%… 物価上昇に「焼け石に水」格差が徐々に可視化
#鷲尾香一
2022年に賃上げを行った企業は85.7%で、その平均額は5534円、改定率(上昇率)は1.9%にとどまっている。厚生労働省は11月22日、「令和4年(2022年)賃金引上げ等の実態に関する調査」(回答数2020社)を発表した。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/jittai/22/index.html
総務省が発表した10月の消費者物価指数(変動の大きい生鮮食品を除く総合指数)は、前年同月比で3.6%上昇した。伸び率は消費増税時を上回り、82年2月(3.6%)以来40年8カ月ぶりの上昇幅となった。
物価上昇が続く中、サラリーマンの多くにとって生活を維持していくためには賃金の引上げに期待せざるを得ない。しかし、厚労省の発表によると、22年の賃上げは「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」企業の割合は85.7%(前年80.7%)にとどまっている。
一方で、賃金改定を実施した企業の中で、「賃金カットを実施した、または予定している企業」の割合も7.1%(同7.1%)にのぼっている。
改定額の平均は5534円で、改定率(上昇率)は1.9%にとどまっており、物価が4%近い上昇となっていることを考えれば、まさに“焼け石に水”といった状況だ。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、賃金引上げを行った企業は19年の90.2%から20年には81.5%に、21年には80.7%に減少していた。(表1)
新型コロナの影響で企業業績が悪化したことに伴い、20年、21年と賃上げを実施した企業割合が減少していただけに、22年の賃上げに対しての期待感は高かったが、22年の改定額(引上げ額)は5534円で、改定率(上昇率)は1.9%にとどまった。
19年の5592円、2.0%の後、20年は4940円、1.7%、21年は4694円、1.6%と大きく落ち込んでおり、22年は改定額、改定率とも20年、21年を上回りはしたものの、19年には届かなかった。(表2)
賃金の引上げ実施には、企業規模で格差も見られる。実施企業の割合は、従業員5000人以上では96.0%だったが、100~299人では83.7%にとどまっている。また、改定額も従業員5000人以上の企業では6478円だったのに対して、100~299人の企業では4738円で1740円の差があった。
夏の賞与の支給は、21年には85.7%が支給したのに対して、22年には86.2%が支給しており、企業の支給割合が回復しているものの、賃金引上げの実施と同様に企業規模の格差があり、22年の支給では従業員5000人以上の企業では96.1%が支給したのに対して、100~299人の企業では83.6%にとどまっている。
企業業績の悪化に対して、経営陣は大きな責任を負うことになるが、管理職も同様に賃上げに関しては一般職に比べ、賃上げが実施される割合が低くなっている。19年には一般職の80.4%で賃上げが行われたのに対して、管理職では71.2%にとどまっている。これが20年には一般職75.5%、管理職67.3%、21年には一般職74.6%、管理職63.1%にまで低下した。ただ、22年には一般職が74.1%に低下したのに対して、管理職は64.5%と若干ながら回復している。(表3)
管理職は一般職よりもベースの賃金が高く、また、管理職手当なども支給されているとはいえ、賃上げが実施されないとなれば、生活に与える影響も大きいだろう。
賃金の引上げが行われた企業の一方で、賃金カットが実施された企業も7.1%に上っている。その割合は19年には6.0%だったが、20年には10.9%に上昇、21年には7.7%に低下し、22年も7.1%に低下したものの、19年を上回る割合となっている。(表4)
依然として物価上昇が収まる気配はない。こうした中、賃上げの改定率は物価上昇率を下回り、さらには賃金カットまで行われている。政府が適切な物価対策を行わない限り、国民の生活は苦しくなるばかりだ。
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