くりぃむしちゅーの有田が“芸能界引退宣言”第2の人生に多数の選択肢がある現代
#檜山豊
今月24日午後8時、インターネットテレビ局ABEMAにて、くりぃむしちゅーの有田哲平さんが緊急記者会見を行った。有田さんは記者会見の中で「私、有田哲平は、極めて近い将来、芸能界を引退します」と発表。そのうえで「そこでですが、引退をする前に1つだけやりたいことがあります。それが『有田哲平の引退TV』です」と。
つまり緊急記者会見とは有田さんの引退発表ではなく、ABEMAでの新番組スタートを告知する目的のパフォーマンスだったのだが、僕はこの記者会見に対してほんの少し違和感を感じてしまった。その違和感とは「いつから芸人に引退制度が出来たのか」という部分だ。
もちろん今までも、引退していった芸能人は多数いる。例えば山口百恵さんのように国民的アイドルが、地位も名誉も捨てて新しい生活をスタートする為に芸能界を辞めるという前向きな引退が主な物で、不祥事によって芸能界にいられなくなり引退を余儀なくされるというのは、昔はあまりなかった。さらにアイドルや俳優さんのようにイメージ商売の芸能人ならまだしも、品行方正とは程遠いところにいた芸人が、不祥事により引退しなければならなくなったのは、ここ最近の話だ。
今回の有田さんの場合は、新しい番組をスタートする為の宣伝文句として「引退する」パフォーマンスしたのだが、特に不祥事も起こさずにメジャーな位置に居ながら、宣言をして実際に引退した芸人は「上岡龍太郎」さんぐらいではないだろうか。
上岡さんは人気MCだったにも関わらず、1997年に自身で司会をしていた『鶴瓶・上岡パペポTV』(日本テレビ系)の新春スペシャルのオープニングで「2000年に芸能界デビュー40周年を迎える。僕の芸は20世紀で終わり。21世紀には新しい人生を歩みたい」と表明し、3年後の2000年4月『徹子の部屋』(テレビ朝日系)の出演を最後に、芸能界を引退した。それ以降、稀に何らかの形で紹介されることもあるが、基本的には露出をしていない。
芸人を引退したというと「ブルゾンちえみ」さんも頭をよぎるが、ブルゾンさんの場合、芸能界引退といよりは“芸人を辞めた”というのが正しい言い方だろう。
これまでは芸人に限らず芸能人は、人気絶頂から段々とその人気が薄れていき、それに伴い番組出演も減っていき、最終的に仕事があまり入ってこなくなり、正式に引退はしなくともテレビ的には事実上の引退といったパターンが多かった。
しかし現代はテレビに出ていなくても、SNSや配信番組などほかの媒体で露出することが可能になり、テレビでは忘れ去れた芸人がYouTube界では絶大なる人気を誇り、新たな道を歩んでいるなどざらにある。しかも不本意ながら芸能界を引退させられた元芸能人たちですら、それが可能になっているのだ。
つまり芸能界引退はただテレビに出なくなっただけで、自身を露出したり情報を発信することは無限に出来てしまうのだ。
ましてや有田さんのように「プロレス」などのイメージがついている芸人は、その専門分野で需要がある為、固定ファンが付きやすく、テレビに出られなくなったとしても食いっぱぐれることはない。裏を返せば自ら引退を宣言しなければ、多方面からオファーがあるはずなので、上岡さんのように新しい人生を歩んだり、われわれのような一般人になって静かな生活を手にすることは不可能ということなのだ。
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