『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』京アニが“女性の社会進出”を実直に表現
#金曜ロードショー #しばりやトーマス #金ロー
実社会でも女性の社会進出の象徴となったタイピスト
製作は、圧倒的なクオリティで他の追随を許さぬ会社として知られている、京都アニメーションがシリーズを通して手掛けている。原作は京都アニメーションが発行している文庫レーベル、エスマ文庫の「京都アニメーション大賞」の第5回大賞作品。同賞では受賞作品の多くが京都アニメーションの手によりアニメ化されているが、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、同賞の中で唯一の大賞受賞作品だ。
『ヴァイオレット~』がただひとつの大賞受賞作品という栄誉に輝いた理由として「女性の社会進出」というテーマを描いていることがあげられるだろう。
ドールと呼ばれる‟自動手記人形”の作業は、タイプライターで行われる。同作の世界は終戦間もない時代で、世の中の女性たちにとって社会に進出する機会としてこの仕事が選ばれている。
実際の社会でもタイプライターが普及するより以前は、手書きで口述筆記や清書を行うために速記ができる人材が存在したが、今度はタイプライターを打つ仕事、タイピストが誕生する。2012年のフランス映画『タイピスト!』は、地方では親の勧める縁談しかないという将来を嫌った主人公が、唯一の特技であるタイプライターの早打ち大会で世界一を目指すという物語。タイピストは秘書や電話交換手に並ぶ、女性が社会進出するための代表的な職業となった。
本作は十代の少女なのに戦争の犠牲になって効率よく人を殺すことしか知らず、常に無表情で「愛している」という言葉の意味もわからなかったヴァイオレットがタイピスト、代筆の仕事を通して人の感情を理解するようになっていき、平和な社会に溶け込んでいく。現実の社会を反映したかのような物語は、深夜アニメ作品ではあまり見受けられない。
昨今の日本のアニメーション作品における女性像は可愛らしさやヒロイックな面に集約されがちだが、社会に進出していこうとする女性の立ち位置(を殊更強調せずにさりげなく)を実直に表現した作品というのは、中々ないのではないか。
こういった点がディズニーやピクサー、ジブリといった会社とはまた違う方向性で全世界に通用する作品を生み出している、京都アニメーションの特色といえよう。
あまりに感動的で心から愛してしまう作品なので、他局で放送されたアニメなのに、金ローはテレビ版を再編集した『特別編』と『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 – 永遠と自動手記人形 -』を去年放送してTwitterの世界トレンド1位を獲得した! そして今夜完結編にあたる劇場版が放送される。
局の垣根すら飛び越えてしまう『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の完結をぜひ見届けてください。
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