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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 瓜田純士『すずめの戸締まり』を観て気絶

“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士、『すずめの戸締まり』を観て気絶!「映画でこんなストレスを感じたのは初めてだ」

損害賠償レベルの被害を受けるも人のよすぎる芹澤くん

――さっきからダメ出しばかりなので、ここらで褒めるべきポイントを挙げてもらえますでしょうか。

純士 良かった点は二つ。まず一つ目は、後半になって、芹澤くんという救世主が現れた点。この作品はほとんど芹澤くんが救ったと言っても過言じゃないですよ。彼は見た目こそチャラいけど、その心は海のように広くて、空のように綺麗なんです。草太を心配して動いていただけなのに、すずめの彼氏と疑われ、すずめのおばさんから「付きまとうな」と怒鳴られる。さらには片道7時間もの長距離を運転させられ、すずめとおばさんの喧嘩に巻き込まれ、挙げ句の果てにはマイカーが土手に転落してドアが大破。その瞬間に、もう用無しとばかりに、すずめとおばさんは「じゃあここで」とか言って、スタコラサッサと去っていってしまう。

 普通だったら損害賠償を請求していいレベルの酷い目に遭ったというのに、芹澤くんは「やれやれ」という表情を浮かべるだけで、文句一つ言わないんですよ。そんな芹澤くんが人としてほんとに素晴らしかったです。

 もう一つ、素晴らしかったのは、おばさんが豹変するシーン。それまでずっと優しかったおばさんが、黒猫の出現と同時に、心の中に隠していたドス黒い思いを突然吐露し始めましたよね。それまでずっと退屈だったけど、あのシーンで初めてヒリヒリしました。まさに『GANTZ』『寄生獣』『孔雀王』などでも見られるような、日本アニメ独特の「面白くなる瞬間」でした。あの空気感がもっと欲しかった。映画にはそれが必要なんですよ。

――音楽の使い方はどうでしたか?

純士 BGMのセンスがないですね。特にすずめと椅子と猫が追いかけっこするシーンで、東京スカパラダイスオーケストラみたいな音楽が流れていたけど、あれ、場面とまったく合っていないでしょ。

 芹澤くんのカーステから、ユーミンや松田聖子や井上陽水などが流れてくるのも、最近、若い人の間で昭和歌謡が流行っているから、めざとくそのあたりを突いてきたなぁと思って鼻につきました。しかもそこで、芹澤くんが「ゲストに合わせて選曲した」というナイスなフリをせっかく言ってくれたのに、それに対しておばさんがノーリアクションだったのも残念。「失礼ね。私はそんなに年齢いってないわよ!」と突っ込めばオチがついて、面白くなったのに。

――あれは車に同乗しているすずめとおばさんが喧嘩中だったから、河合奈保子の「けんかをやめて」を流して、「ゲストに合わせて選曲した」と言ったのでは……?

純士 そうなの? わかりづれぇんだよ、新海って奴は! 頭にきたから音楽に関する文句をもう一つ言うと、「今回はやっとRADWIMPSが外れてくれたか」「育ちの良い学級委員長が歌うお涙ちょうだいソングを聴かずに済んだか」と胸を撫で下ろしていたんです。ところが最後の最後、エンディングの瞬間に裏切られました。「やっぱりお前らか!」と。その瞬間、気絶を通り越して昇天しました。

――この映画、観て良かったですか?

純士 作品を通じて一緒に泣いたり、一緒に笑い合ったりできれば、夫婦喧嘩もなかったことになるんだけど、新海だとすべてが引っかかったままなんですよ……。作品が酷いから。

麗子 主人公のすずめの性格が、純士と似ていたから、なんだか純士を観ているみたいで……。ちょっとしたことを大袈裟に捉えて怒るし、暴れるし、気難しいし、ワガママやし……。純士を忘れて映画を観たいのに「映画でもお前かよ」みたいな。「もうやめてくれよ、映画ぐらいゆっくり観させてくれよ!」と。そんなことを、ひしひしと感じましたね~。

――新海監督、どうかお気を悪くなさらずに!

(取材・文=岡林敬太/撮影=おひよ)


『すずめの戸締まり』瓜田夫婦の採点(100点満点)

純士 3点
麗子 30点

※「“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士、かく語りき」の記事一覧 

瓜田 純士(元アウトローのカリスマ)

1979年、新宿歌舞伎町生まれ。元アウトローのカリスマ。著書に『ドブネズミのバラード』(太田出版)、『遺書〜関東連合崩壊の真実とある兄弟の絆〜』(竹書房)など。

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Twitter:@Junshiurita

瓜田純士プロファイリング

うりたじゅんし

最終更新:2022/11/25 13:00
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