運送業は高血圧や糖尿病の人が多い… 職業と健康についての研究、富山大学Gが発表
#鷲尾香一
心疾患や高血圧、糖尿病では企業の規模と産業別に2倍近い格差があり、狭心症や心筋梗塞は小規模の企業で多く、高血圧や糖尿病は運輸業で多いとの研究結果を富山大学の研究チームが11月10日に発表した。
https://www.u-toyama.ac.jp/wp/wp-content/uploads/20221110_2.pdf
研究チームは16年度にJCHO高岡ふしき病院の健康診断を受診した30歳から75歳の男性1万572人の分析を行った。女性は冠動脈疾患が男性に比べて非常に少ないことなどから、男性のみの分析とした。
冠動脈疾患は問診で「狭心症、心筋梗塞で内服中」と回答した人を「冠動脈疾患有り」と定義した。さらに、健診受診者の所属する企業の規模と産業別に分類し分析した。
まず、喫煙(現在の喫煙と過去喫煙を含む)と運動不足の割合の企業規模別、産業分類別では、企業規模では301人以上の企業に比べて、小規模になるほど喫煙率が高いことがわかった。喫煙率は1~20人の企業では81.2%だったが、301人以上の企業では72.1%と約10%低かった。
運動不足の割合も1~300人までの企業では55%を上回っていたが、301人以上の企業では53.8%と55%を下回っていた。
同じく、喫煙と運動不足の割合の産業分類別では、喫煙に関しては農林漁業、建設業、運輸郵便業、その他サービス(廃棄物処理業、自動車整備工場、機械等修理業、職業紹介など)が高い割合だった。
喫煙率では、建設業が82.8%ともっとも高く、農林漁業、運輸・郵便、公務で80%を超えていた。もっとも低かったのは医療・福祉の65.7%、次いで、学術研究・専門の69.1%だった。
運動不足では学術研究・専門が71.4%と圧倒的に高く、次いで、運輸・郵便の63.8%だった。もっとも低かったのは農林漁業の42.5%、次いで、医療・福祉の48.1%で50%を下回ったのは、この2業種だけだった。
こうした基礎データをベースに狭心症、心筋梗塞といった心疾患の有病率、高血圧と糖尿病の有病率の分析を行った。
狭心症、心筋梗塞の有病率は全体で149人(1.5%)だったが、企業規模別で差が見られ、 301人以上の企業では0.8%だったのに対して、規模の小さい企業では高い有病率が見られた。1~20人では1.6%、21~100人では1.8%、101~300人では1.5%といずれも1%を上回っており、21~100人では301人以上に比べ、約2倍の有病率となった。
心疾患のリスクファクターである高血圧、糖尿病では、全体で高血圧の有病率は31.5%、糖尿病は11.0%だったが、産業分類別の分析では大きな差が見られた。高血圧ではその他サービスが40.1%ともっとも高く、次いで、運輸・郵便の37.3%となった。低かったのは医療・福祉の27.4%、次いで、製造業の27.5%だった。
糖尿病は公務が15.2%でもっとも高く、次いで、運輸・郵便の14.4%だった。低かったのは製造業の9.1%、次いで、電気ガス水道業の9.6%だった。運輸・郵便は高血圧、糖尿病ともに2番目の有病率となっている。
研究グループでは、「生活習慣や年齢などを考慮しても中小企業で冠動脈疾患の危険度は高く、また産業分類では運輸郵便業で高血圧と糖尿病が多い。この結果から、健康は個人の生活習慣に加えて社会経済的状況から影響を受けていると考えられる。」としている。
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