『SLAM DUNK』と『イッテQ』は似てる!? 桜木花道とイモトアヤコで分かる法則
#SLAM DUNK #深田憲作 #企画倉庫 #アレのどこが面白いの?~企画倉庫管理人のエンタメ自由研究~
放送作家の深田憲作です。
「企画倉庫」というサイトを運営している私が「あの企画はどこが面白いのか?」を分析し、「面白さの正体」を突き止めるための勉強の場としてこの連載をやらせてもらっています。
今回のテーマは「人気マンガ『SLAM DUNK(スラムダンク)』について」です。
『スラムダンク』は週刊少年ジャンプで1990年から1996年まで連載されたバスケットボールマンガ。現在39歳の私は『スラムダンク』ドンピシャ世代。小・中学時代は毎日のように昼休憩や放課後にバスケットボールで遊んでいたものです。ややマイナーなイメージの部活だったバスケ部が『スラムダンク』のヒットを機に、運動神経がいいイケてる男子が集う華の部活に変貌を遂げる様も見届けました。日本のバスケットボールはスラムダンク以前・以後に分けられると言っても過言ではないレジェンド漫画だと思います。
スラムダンクドンピシャ世代としては、12月3日から映画が公開されるこのタイミングで『スラムダンク』について書いてみたいと思いました。いや、正確に言うと、作者である井上雄彦先生について書きたいことがありました。
私は、2009年に放送されたドキュメンタリー番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK)の中で、井上先生が語ったある言葉を“エンタメ作りにおける真理・真髄”として大事に心に留めています。その言葉とは「マンガを描く上でストーリー展開には興味がない。大事なのは人間が描けているかどうか」というもの。
一瞬、「『スラムダンク』や『バガボンド』を描いた人がストーリーに興味ないってどういうこと!?」と思ったのですが、この言葉の真意は「キャラクターを魅力的に描くことが出来れば、ストーリーはどんなものであってもマンガは面白くなる」ということ。井上先生のマンガ作りはストーリー展開を考えることでなく、登場するキャラクターをいかに魅力的に描くかが全てだと言うのです。
「ストーリー展開に興味がない」とまで言い切ることに驚愕したのですが、この言葉を聞いて改めて『スラムダンク』に出てくるキャラクターを思い浮かべてみると、ヒール的な役割のキャラクターであっても「ただの嫌な奴」には描いていないことに気づきました。
もっと詳しく言うと「嫌な奴の人間味や魅力もちゃんと描いている」ということです。例えば、全国大会の1回戦で当たった大阪代表・豊玉高校の選手たちは、ラフプレイや暴言を連発する荒くれ者ばかり。しかし、彼らがそうなってしまった背景やバスケに対する愛情、試合で勝つことへの執念をちゃんと描いています。
やんちゃ者の集まりである湘北高校のメンバーも、ただのイケイケの不良ではなく、それぞれが抱える弱点やコンプレックス、それに向き合う内面をしっかりと描いています。主人公・桜木花道はバスケ素人、宮城リョータは低身長、三井寿は一時期ドロップアウトしたことへの後悔、流川楓はスタミナ不足、といった具合に。
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