タッキーとキンプリ脱退に見る「去る信念」「残る信念」──企業利益と自己実現のジレンマ
#ジャニーズ #滝沢秀明 #King & Prince #ジャニヲタおじさん
組織の形は時代によって変容していくもの
芸能事務所に限らず、ほとんどの企業というのはまず一番に利益を追求することを考えるでしょう。多くのアイドルを抱える芸能事務所も、アイドルとしての彼らの夢を叶えていくためには、まず利益をしっかりと生み、アイドルに投資できる経営体質が必要になります。利益を無視してまで夢を追うことは、逆にアイドルとしての彼らの生活を脅かすことになりかねません。
ただ近年は、コロナウイルスの影響もあり、コンサートなどの興行は激減し、ジャニーズが長年培ってきたビジネスモデルから根本的に収益構造の見直しを迫られたことでしょう。そんな中、多くのアイドルを継続して抱えていくには、やはり大きな売り上げや利益をしっかりと出していく必要があったはずです。その中にあって、ある程度利益を優先せざるを得ない現実的な事情とKing & Princeの脱退するメンバーやタッキーの思いが噛み合わなかったのかもしれないと、私は想像してしまいます。
今回のタッキーやKing & Princeの件を受けて、ジャニーさんが生きていたら、というファンの声もちらほら目にしました。確かに、ジャニーさんという特別な存在がいたならば、彼らの気持ちを何かしらの形で抑え込むことができたのかもしれません。ただ、ジャニー喜多川さんが存命だった時代にも、個人的な理由によるグループの脱退や解散はありました。例えばそれが、海外留学だったり、ソロデビュー志向だったり、事務所外での活動だったり、理由はさまざまですが、今に始まったことではないように思われます。
ジャニーズに限らず芸能界全体を見渡しても、以前より組織に個人を縛りつける力は、確実に弱くなっています。時代が多くの選択肢を許容するようになった面もあります。とはいえ、組織と個人の思いが擦り合わないことは、今も昔もありうることなのだと思うのです。
私自身、会社員という肩書で四半世紀を過ごした中で、多くの仲間を見送り、また私自身も転職を通じて組織を離れる経験もしました。ジャニーズの世界と会社員の世界を単純に比べることは難しいかもしれません。ただ、長年組織に属する人間として思うのは、組織を去る者、組織に残る者、それぞれに譲れない信念があるならば、それは残念ではあるものの誰にも止めることはできないということです。
組織は常に同じ形を保っているわけではありません。組織のミッションやアプローチは、組織としての成熟度や、時代のニーズ、また組織を構成するメンバー個々の考え方や経験などによって変化をしていきます。アイドルグループも、デビューした当初から、成功や失敗を繰り返す中で、グループに求められる姿も、メンバー個々の考え方も、変容してくるものです。その中で、グループのメンバーが両立不可能な信念を持ち合わせたとしたならば、どちらかが信念を曲げるか、それぞれの道を歩むか、そのいずれかしか選択肢はないように思うのです。
会社員とアイドルの間に決定的な違いがあるならば、それはファンの存在だと思います。アイドルという存在は、ファンがいて初めて成立します。ファンが喜んでくれるから、アイドルはアイドルとして存在することができるのです。ファンのことを思って、グループを維持するために、信念を曲げるという選択は、あるいはありうるのかもしれません。ただ、組織を去るアイドル、組織に残るアイドル、それぞれにファンを喜ばせるための異なる信念を持っていて、それを曲げることでファンを喜ばせることができないと思うならば、やはりそれは残念であるものの、止めることはできないだろうな、そう私は今回の件を通じて感じました。
かつてない流動的な時代の中で、多様化する個人の思いを組織として受け止めることが、結果として叶わなかったことは、本当に残念だと思います。あるいは、ジャニーズ事務所という組織の在り方を根本的に問われていると言えるかもしれません。一方で、去るにせよ、残るにせよ、それぞれが信念を持って決断した結果であるならば、涙が出るほど悲しいですが、ファンとしては受け止めるしかないという思いです。タッキー、King & Princeの5人、そしてこれからもジャニーズ事務所に残る多くのアイドルたちにとって、その信念に間違いがなかったと思える結果が伴うことを、ジャニーズのファンとして切に願うばかりです。
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