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日刊サイゾー トップ > エンタメ  > 死刑執行に関わる人たちの声を特集
『ねほりんぱほりん』レビュー

葉梨前法相更迭と同じ日に「元刑務官」登場、死刑執行に関わる人たちの声「ふとしたときに…」

受刑者に洗脳され、手懐けられる刑務官

 ショウゴさんも、危険な目に遭ったことがあるらしい。刑務官4年目の頃、彼は「処遇困難者」の受刑者の単独房の担当になった。暴力団幹部、外国のマフィアのボス、重度の薬物依存者が収容されているところである。

 相手は武器を持ってないとはいえ、そんな筋金入りばかりいるところの担当を任されるのはプレッシャーだっただろう。なにしろ、向こうは海千山千だ。

ショウゴ 「外国人マフィアのボスが、『○▲(国名)からお金を送ってあげるから、ああしろこうしろ』と。篭絡っていうんですけど、職員を手なずけるんですよね」

セイタ 「ニュースになってると思うんですけど、覚醒剤を渡した刑務官とかいますから」

 2013年、府中刑務所の看守が受刑者に頼まれ、自ら覚醒剤を入手してそれを受刑者に渡したという報道があった。金品の提供や脅迫により刑務官が受刑者に便宜を図る不祥事は、今まで度々発覚している。なぜ、こんなことが起きてしまうのか?

セイタ 「最初は、小さなきっかけだったと思うんですけど。何かを見逃した、もしくは新聞とかを長く読ませてあげたときに、『こんなことしていいんですか? 言いますよ!?』っていうところから、少しずつ広げていったと」

ショウゴ 「篭絡っていうのは、職員が気付かないうちにされるんですね。詐欺師みたいなものです。無意識に引きずり込まれてしまうので。こちらは当然気を張っているんですけど、気付いたら篭絡されて、気付いたら不正をしてて、気付いたらクビになってた……みたいな感じになってしまう」

 これは、一種の洗脳である。相手は、その手口のプロだ。相手の隙につけ込み罪を犯した人間は、刑務所に入っても同じことをする……ということか? 刑務官側も規律で厳しく管理されているのは、それが理由なのだろう。両者に厳しい規律がないと、刑務所は成立しない。

 単独房の担当になった頃、特にショウゴさんの印象に残ったのは、威力業務妨害で服役したある暴力団の幹部だった。

「インテリヤクザみたいな男で、常にニコニコして気味の悪い男だったですね。もともと、工場にいたんですけど、工場で他の受刑者を配下において集団形成を組もうとしたので懲罰にあげられ、それが気に入らないということで、工場の担当職員さんは非常に危ない目に遭いました。その担当職員さんにはお嬢様がいたんですけど、自宅に暴力団の人間から電話がかかってきて、『お前の娘をさらうぞ!』というようなことがあったり」(ショウゴさん)

 刑務官も人間である。ご家族が狙われないよう、刑務所内では偽名を使えればいいと思うのだけど……。あと、出所した受刑者のお礼参りにも気をつける必要がある。映画『孤狼の血 LEVEL2』で、出所した暴力団員が刑務官の家族に復讐するシーンがあるが、あれが現実に起きたら……と、考えただけで恐ろしくなる。

 ショウゴさんは、そのインテリヤクザの近くに居続けた。仕事だから仕方ない。向こうは、いつ牙を剥いてくるかわからない。ずっと気が抜けず、帰っても寝られず、飯が喉を通らない日々は1年続いた。

「精神的にかなり参ってましたね。見かねた妻が、『病院行きなさい』と。病院に行って、睡眠薬を処方してもらって、それでなんとか乗り切ってました」(ショウゴさん)

 刑務官と受刑者。刑務官のほうが立場は圧倒的に上かと思いきや、決してそうではなかった。1人の受刑者の存在で、眠れなくなるほどのプレッシャーを感じることもあるのだ。日常生活では絶対に避けて通るタイプと1日中向き合わなければならない。例えようのない恐怖とストレスが襲ったことだろう。

 そもそもの疑問なのだが、2人はなぜこの職業を志したのか? 昨年放送された女子刑務所編と比べると、エグさがあまりにも違うのだ。刑務官という仕事は世襲が多いイメージだが、だとしても割に合わなすぎる。

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