キンプリ分裂、タッキー退任に見るジャニーズ事務所「創業家一強体制」の大リスク

　平野紫耀、岸優太、神宮寺勇太のメンバー3人が来年5月に脱退し、その後は永瀬廉と高橋海人の2人で活動することが発表された、ジャニーズ事務所のKing & Prince（以下、キンプリ）。平野と神宮寺は脱退と同時に、岸は秋に事務所を退所するという。

　脱退発表に至った経緯を報じているのは、『週刊文春』2022年11月17日号（文藝春秋）だ。記事によると、平野がジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子社長との面談を求めるも、ジュリー社長が幾度となくドタキャン。9月頃になりメンバー5人とジュリー社長の面談が開かれたものの、ジュリー社長は聞く耳を持たなかったという。

　この報道を受け、ジャニーズ事務所は、事実と異なる内容が含まれているとして、週刊文春に対し法的措置を検討していると発表した。

「文春の報道内容がどれくらい真実に迫っているかどうかは別として、滝沢秀明氏がジャニーズ事務所の副社長とジャニーズアイランドの社長を退任した今、ジュリー社長がワントップに近い体制であるのは間違いないでしょう」（芸能事務所関係者）

　ジュリー社長の母親は、ジャニーズ事務所の名誉会長だった故・メリー喜多川氏。そしてそのメリー氏の弟が、創業者である故・ジャニー喜多川氏だ。

「ジャニーズ事務所は、結局喜多川家、そして藤島家の会社なんですよ。創業者一家に口出しできる人は、基本的にはいない。ジュリー社長と方向性が合わなければ、退所という選択肢が濃厚になってくる、ということでしょう。ただ、もし飯島さんが今もジャニーズにいてくれたら、こうはならなかったかも……と話す関係者は少なくありません」（同）

　「飯島さん」とは、ジャニーズ事務所でSMAPのマネージャーを務めた飯島三智氏だ。2016年1月に飯島氏がジャニーズ事務所を退社すると、同年いっぱいでSMAPは解散。稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾は、17年に飯島氏が代表を務める新会社「CULEN」に移籍した。

「基本的にジャニーズ事務所は、創業家一族の“お気に入り”にならないと売り出してもらえないわけですが、SMAPは創業家のプッシュではなく、飯島さんの手腕で売れたグループ。ジャニーズ内では浮いた存在だったのですが、一方で絶大な知名度と人気で、メディアに対する影響力は相当なものだった。だから、ジャニーズの創業家も、飯島さんには一目置いていたわけです」（同）

　当時のジャニーズ事務所では、飯島氏が受け持つグループは“飯島班”と呼ばれていた。

「もしも、いま飯島さんがジャニーズにいたら、ジュリーさんとの折り合いが悪くなったキンプリが“飯島班”に組み込まれていた可能性もあったでしょう。そうすれば、分裂という最悪の展開はなかったはずです」（同）

　ジャニーズ事務所だけでなく、日本の芸能事務所では創業家一族がすべてを支配するケースが多いという。

「芸能事務所は基本的に中小企業で、上場していないところがほとんどだということもあるんですが、やはり創業家が強すぎて、周囲が口出しできないことが多い。ナベプロなんかもそうです。　ただ、こういった事務所は、創業家がコケたときに全部がコケてしまうというリスクも高い。ジャニーズ事務所もジュリー社長一強体制になっていますが、もしここで所属タレントがキンプリや滝沢氏に追随して反旗を翻したら、とんでもないことになります。だからこそ、飯島さんのような創業家に立ち向かえる勢力が社内にいたほうがいいんです」（レコード会社関係者）

　ジャニーズのアイドルグループはとんでもなく大きなビジネスになっている。日本のエンタメ界では、絶対に欠かせない存在だ。

「万が一、ジャニーズがなくなったら、飯が食えなくなるエンタメ関係者は山ほどいます。言うなれば、そういった人々の生活まで、ジュリー社長にかかっている状態。これは相当に危険ですよ」（同）

　ジャニーズ事務所内部も、それ以外でも、問題点が浮き彫りになったと言えそうな、今回のキンプリの分裂劇。これを見て飯島氏は今、何を考えているのだろうか──。

手山足実（ジャーナリスト）

出版業界歴20年超のベテランジャーナリスト。新聞、週刊誌、カルチャー誌、ギャンブル誌、ファンクラブ会報、企業パンフレット、オウンドメディア、広告など、あらゆる媒体に執筆。趣味はペットの動画を見ること、有名人の出没スポットパトロール。

てやまあしみ