『そして、バトンは渡された』石原さとみ歴代ベスト5クラスの仕事が見せる傑作
#金曜ロードショー #しばりやトーマス #金ロー
血の繋がらない人から愛情のバトンリレーが胸を打つ
「叙述トリックを用いている」ということ自体が『そして、バトンは渡された』の映画版を大きく変えている。この映画版はその一点で大きく評価が分かれた。
まず、原作にないトリックを使ったことで原作に出ていない人物を登場させていること、そのために物語の展開に無理が生じていること、さらに過剰な「泣かせ」の演出が入っている。
映画は文字で読む小説とは違うタイプのエンターテイメントだから、原作版とは違う類の表現にするため、一部の展開を変更するというのはわかる。ただ、その変更された部分の多くが観客を泣かせるために機能しており、必要以上に泣かせようとする、邦画の悪癖が出ているのが残念。
とある人物が辿った顛末、そして最後なんて、原作通りにしても構わないのにあんな風にしてしまったら意味がないような気がする。「泣かせ」の演出が入ったために上映時間は137分もある! 前田哲監督はインタビュー記事で“安易に泣かせる映画にはしなかった”と言ってるのだけど、ある人物の結末は泣かせるための結末にしか見えなかったなあ。
だとしても『そして、バトンは渡された』は素晴らしい。この手のお話は「血の繋がらない人達に育てられて大変だったね。可哀そうだね」といった展開になりがちだが、そうではなく血の繋がらない人たちから愛情のバトンを渡され、それがリレーされていき、時にバトンを落とすことがあったってまた拾って歩き出せばいいよという物語は胸を打つ。
役者陣も永野芽郁、田中圭、岡田健史らのケレン味のない演技は、作品世界にマッチしており好印象を残す。特に「目的のためには手段を選ばない」と公言し、男をとっかえひっかえし自由奔放に生きている女性、梨花役の石原さとみの生き生きとした演技ときたら! 石原の歴代ベスト5クラスの仕事と言えましょう。彼女は本作公開前の出産を経て仕事を一部制限していますが、仕事のバトンリレーは途切れさせないでくれ!
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