トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > カルチャー > 映画  > 男性が恐れるべきフェミニズム映画

男性が恐れるべきフェミニズム映画『ドント・ウォーリー・ダーリン』の魅力

「選択肢のなさ」を男性こそが恐れてほしい

男性が恐れるべきフェミニズム映画『ドント・ウォーリー・ダーリン』の魅力の画像5
C)2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

 劇中の「ユートピア」では、男性たちは「世界を変えようとする勇敢な者」、女性たちは「ただ男性に従っていればいい存在」として描かれている。それを受け入れれば、豪華な家に住み、夫婦仲睦まじく、平穏無事に暮らせる。そのことを「ぜんぜんいいじゃん」と受け入れられる男性も、もしかしたら女性も、いるのかもしれない。

 だが、オリビア・ワイルド監督は、こう問いかけている。「唯一の選択肢が、実はまったく選択の余地がないということならどうしますか?」と。本作で描かれた世界は確かに表向きはユートピアなのかもしれないが、前述した通り実際は凝り固まったジェンダーロールを押し付けられてるし、もっと大きな「否応もなく選択肢のない状況」に追い込まれているとも言える。

 その「画一的な価値観」による「選択肢のなさ」は、女性はもちろん、男性こそ恐るべきものではないか。この『ドント・ウォーリー・ダーリン』で描かれた舞台や設定は、現実ではあり得ないファンタジーではあるが、そこに至るまでの夫婦(パートナー)の心理や葛藤は「今の世界にもあり得るもの」なのだから。

 あえて本作が賛否両論を呼びそうなところをあげるのであれば、回収されていない伏線があるように思えること、大胆とも言える「終わり方」をすることだろう。だが、ひとつだけの明確な答えを出さない、あえて「これからあなたたちはどうしますか?」と、モヤモヤするからこその宿題が出されていることも、また誠実だと思うのだ。

昨今に「フェミニズムスリラー」が作られる理由

男性が恐れるべきフェミニズム映画『ドント・ウォーリー・ダーリン』の魅力の画像6
C)2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

 最後に、この『ドント・ウォーリー・ダーリン』に通ずるところのある、近年の「フェミニズムスリラー」も簡潔に紹介しておこう。

『透明人間』(2020)……明らかにDV被害に怯える女性のメタファーになっている。
『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020)……性加害者が「許される」社会への強い怒りが込められている。
『ラストナイト・イン・ソーホー』(2021)……1960年代の華やかなロンドンの「裏」を描く。
『最後の決闘裁判』(2021)……史実をベースとした「裁判で物事を決める」おぞましさ、さらに女性への抑圧の浅ましさを描く。
『バーバリアン』(2022)……レンタルハウスのダブルブッキングから予想外の恐怖に遭遇する、「男女の距離感」も描いた内容。

https://www.cyzo.com/2021/12/post_298110_entry.html

 こうした「男性によるセクハラや性加害、もしくは女性への抑圧を描く」スリラーが作られるのは、やはり2017年の映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインの性暴力の告発、そして#MeToo運動の影響があるのだろう。こうしてエンターテインメントで「男性に恐怖をもって注意を促す」ことには大きな意義があると、『ドント・ウォーリー・ダーリン』を観て改めて思えたのだ。

男性が恐れるべきフェミニズム映画『ドント・ウォーリー・ダーリン』の魅力の画像7
C)2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

 

 

『ドント・ウォーリー・ダーリン』

2022年 アメリカ映画 / 2022年11月11日 日本公開作品 / 原題: Don’t Worry Darling
監督/製作:オリビア・ワイルド
製作/脚本&原案:ケイティ・シルバーマン
原案/製作総指揮:ケアリー・バン・ダイク、シェーン・バン・ダイク
キャスト:ローレンス・ピュー、ハリー・スタイルズ、オリビア・ワイルド、ジェンマ・チャン、キキ・レイン、ニック・クロール、クリス・パイン
上映時間:123分 / スコープサイズ / 2D
字幕: 松浦 美奈 / 映倫区分:PG12 / 配給:ワーナー・ブラザース映画
C)2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

ヒナタカ(映画ライター)

「ねとらぼ」「cinemas PLUS」「女子SPA!」「All About」などで執筆中の雑食系映画ライター。オールタイムベスト映画は『アイの歌声を聴かせて』。

Twitter:@HinatakaJeF

ひなたか

最終更新:2022/11/12 20:00
123
ページ上部へ戻る

配給映画