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『M-1グランプリ』予選に“容姿イジりイジり”のインスタントな笑いが増殖?

『M-1グランプリ』予選に容姿イジりイジりのインスタントな笑いが増殖?の画像1
『M-1グランプリ2022』公式Instagram(@m_1grand_prix)より

 漫才日本一を決める『M-1グランプリ2022』。今年は史上最多となる7261組がエントリーし、10月31日までに3回戦が終了、112組が準々決勝(11月12~16日開催)に駒を進めた。

 昨年決勝戦に進出した「もも」や、過去2回の決勝進出経験がある「アキナ」、2019年の決勝戦に進んでいる「すゑひろがりず」がすでに敗退するなど、激しい戦いが繰り広げられている今年のM-1。

『R-1グランプリ2022』優勝のお見送り芸人しんいち&準優勝のZAZYによるユニット「ストレス」、バイク川崎バイク&サンシャイン池崎による「シャウト」など、注目の即席コンビも次々と敗退した。

「まだ3回戦が終わった段階で、ネタを温存しているコンビも多いということもありますが、現時点では実力者が順当に勝ち進んでいる印象です。インパクト重視のコンビも減っていて、まさに実力勝負になりつつある。即席コンビがイマイチなのもそういった事情と関係しているでしょう。ただ、昨年決勝戦に進んだももが、3回戦で敗れたのはちょっとした波乱です」(お笑い事務所関係者)

 ももといえば、お互いが「〇〇顔やろ!」と言いながら、その容姿と行動のズレを指摘するネタでおなじみだ。いわば“こういう容姿の人は、こういった行動をすべきだ”というステレオタイプが根底にあるネタである。

「M-1の審査で、ストレートな容姿イジリをするネタの評価が下がっているのは確かでしょう。昨年とほぼ同じスタイルのネタをしたももですが、昨年まではOKだったものの、今年はもうアウトということかもしれません。たとえばマテンロウなどは、アントニーが日本人とアメリカ人のミックス(ハーフ)であることをネタにしているのですが、それもやはり3回戦で敗退しています」

 その一方で、今年のM-1の予選で多く登場しているのが、「コンプライジり」あるいは「ポリコレイジり」だという。

 多様性を認める昨今の社会情勢の中で“人を傷つけない笑い”が主流になり、容姿イジリは過去のものとなった。そんな状況を織り込んだネタが増えているというのだ。

「たとえば、ボケの人があえてきつく他人の容姿をイジるような発言をして、それに対して『今の時代はそれがいちばんあかんで』のような形でツッコんで笑いに変える……というようなパターンを使うコンビが多かった。芸人もお笑いファンも、社会の流れが変わってきていることは十分に理解しているのだけど、少々の窮屈さを感じているのも事実なのかも。そこで“容姿イジり”をイジることで、舞台上と観客との間で一種の共感の笑いが生まれるというわけです」(同)

 容姿イジリがアウトであるという事実を笑いに変えることは、まさに今の時代に合った手段だと言えそうだが、それもすでに食傷気味だ。

「M-1の予選で何組もネタも見ていると、1日に数回、容姿イジリをイジるネタが出てくるわけです。言ってみれば、すでにパターン化されていて、インスタントに笑いを生み出す方法になっている。M-1においてネタのオリジナリティーは重要な審査要素となっているので、準々決勝以降で誰もがやっている“容姿イジりイジり”を入れることが、ネガティブな評価につながっていく可能性は高いでしょう」(同)

 世の中の流れとともに変化していくのが漫才というもの。その流れを上手くつかむことが、賞レースで結果を出すには必要だ。

 

浜松貴憲(ライター)

1980年生まれ、東京都出身。大学卒業後、出版社に入社。その後、いくつかの出版社を渡り歩いた末に、現在はフリーライターとして、テレビ番組、お笑い、YouTubeなど、エンターテインメント全般について執筆している。

はままつたかのり

最終更新:2022/11/10 06:00
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