葵つかさとイワクラと吉住、寄りかからないそれぞれの戦い
#葵つかさ #テレビ日記 #吉住 #イワクラ
葵つかさ「じゃあAV女優っていまから暴露するけど、それに対してちゃんと反応してくれる?」
番組は葵のプライベートにも密着し、私生活についてのインタビューも行っていた。彼女は海外旅行によく行くらしい。なぜか。日本にいると自分がAV女優であるということから常に逃れられないからだという。
「やっぱり海外に行きたくなるのも、自分が何者じゃなくてもいいじゃないですか」
だから逆に、と彼女は語る。美容院など日常の場面で職業を聞かれた際は、積極的にAV女優であると明かす場合もあるらしい。そんなときの相手の反応を、葵は「一応平静を装ってはくれます。『あー、そうなんすねー』みたいな」と観察する。
「『なんの仕事してるんですか?』って日本の人ってめっちゃ聞くので。それ必要? ってめっちゃ思うんですよ。『きれいだからたぶん芸能人とかやってると思いました』とかって始まったら、じゃあもう責任とってほしいなって、その続き。じゃあAV女優っていまから暴露するけど、それに対してちゃんと反応してくれる? みたいなところは自分はありますね」
常にAV女優という肩書きから逃れられない不自由。だから逆に、彼女は折を見て日常のなかでAV女優であることを自ら明かし、その肩書きを扱う自由が自分にあることを確かめるのかもしれない。
また、AV女優やグラビアアイドルなどで構成されたアイドルグループにかつて所属していた葵。活動を続けるなかで、「なんでAV女優なのに踊ってるのかなとかいろいろ考えるように」なったらしい。
「みんなだいたい、ブランド出したりいろいろするんですけど、そういうのは自分は違うなと思って」
そんな葵がAV女優以外にしている仕事として紹介されたのが、自らがモデルとなった写真展だ。同じ事務所の女優と一緒にヌードを撮影しているらしい。その仕事について、彼女はこう表現した。
「あえて脱いで戦う、みたいな」
グラビアアイドルにしてもAV女優にしても、服を着ることが“ゴール”のようなイメージがある。そんななかにあって、葵は「あえて脱いで戦う」。それは日常のなかでAV女優であることを逆に明らかにするという話にも通底するような、AV女優であることへの自由に向けた「戦い」であるようにも聞こえた。
滅多に表に出さないプライベートを語り、番組後半では母親からの手紙に涙も見せた葵。彼女はエンディングで次のように語った。
「久しぶりのテレビ番組で、こんなに赤裸々に全部出すとは思ってなかったんですけど、逆にこの番組で出せてよかったです。この先、出すことはもうないかなって思います。わかんないですけど」
AV女優の場合、メッセージの発信から受信までのあいだに必要以上の“歪み”――たとえば偏見とか美化とか――が生じやすいはずだ。語られた内容がちゃんと聞かれることが、特にメディアを介すと難しいのだと思う。この記事も少なからず、社会的な歪みを内面化した私の歪みが入っていると思う。
だから一層、いくら「赤裸々」とは言っても番組内ですべてが語られたわけではないだろう。装飾された部分もあるかもしれない。ただ、そんななかでも、「この番組で出せてよかったです」という葵の言葉には、なんだか特別な真実味を聞いてしまいたくなる。イワクラ、吉住、そして葵つかさ。「戦い」という言葉で響きあうものをそこに感じるからだろうか。
いずれにしても、「じゃあAV女優っていまから暴露するけど、それに対してちゃんと反応してくれる?」という言葉に、反応し“寄り添った”番組だったのは確かだと思う。
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