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日刊サイゾー トップ  > 外側ばかりに目を向け判断される……
宮下かな子と観るキネマのスタアたち49

『あのこは貴族』他者の外側ばかりに目を向け判断される世界の中でどう生きるか

水原希子演じる美紀と対象的な門脇麦演じる華子の人生が交差する

写真/Kyogo Hidaka

 美紀とは対照的に、良い家柄の箱入り娘として育った華子は、内向的だけど、生活のゆとりから心にもゆとりがあって品がある。華子演じる門脇麦さんの所作振る舞いは、空気の流れがゆったり変化するのが画面越しにも感じられて、全てが奥ゆかしい。華子と幸一郎の初対面のシーンは、その奥ゆかしさが一層に増して……! 古き良き品格が保たれていて、その空気感に心がときめきました。なんと伝えたら良いのか、明治の純文学を読んでいるような感覚。

「大事な日はいつも雨なんです。」と話し出す姿や、紳士な対応の幸一郎に、華子同様私まで胸を掴まれ、2人の静かな波長が心地良い美しい雨の夜でした。

 まぁその後、私の嫌いな「買ったほうが早くない?」発言をするのが、幸一郎なのですが……。とにかくこの夜の美しさ、2人の間を流れる空気が素晴らしかったです。そんな順風満帆そうな華子ですが、〝結婚=幸せ〟と考える彼女は後にその窮屈さに直面することに。そして思いもよらぬ形で、育ちも境遇も悩みも異なる、美紀と華子の人生が交差するのです。

 作品を観終えた後、今年の夏前に、ある知り合いの方にかけられた言葉が頭に浮かびました。その言葉は、

「かなちゃんは〝かなちゃん〟っていう容れ物に入れられていて、『私はかなちゃんです』って思ってるけど、容れ物じゃなくて、かなちゃん自身が何なのか、かなちゃんはちゃんと分かっていないと思うよ。」

って、そう言われたんです。なんだかドキッとした言葉でした。

 自分が何が好きで、嫌いで、何故そう思ったのか、行動したのか、もっともっと追求して自分を知ることから始めてみて、と言って頂いて。とても有り難い言葉でした。

 振り返ると、今までの人生の選択において例えば高校も大学も、容れ物の名前・ブランドを見て選択してきたようなもので、私は外側ばかりに目を向けて生きてきた気がします。世の中、そのような容れ物で判断されることは本当に沢山ある。この仕事でも、嫌というほど直面したことがあるというのに、だけど無意識に私も、容れ物ばかりに目を向けていて、自分自身の中身が分からず気が付いたら自分を見失っていたんですよね。

 きっと華子も同じだったんじゃないかなと思います。

 私も、その言葉を頂いてから変わりたいと意識するようになり、少しずつ自分を深く知る努力をしています。まだまだ模索中ですが。階段のどこにいたとしても、きっと上を見れば階段は続いていて、その場所其々にきっと違った悩みがあると思います。どんな場所にいたとしても、自分の足でしっかり踏み締めて、堂々と笑っていたいな。華子のラストカットの表情をみて、そう思いました。

 自分をまるごと受け入れて、抱きしめてあげられるような選択を、日々重ねていきたいです。とてもとても丁寧に繊細に紡がれている『あのこは貴族』、自分自身と向き合う時間のきっかけにどうぞ。

 

 

宮下かな子(俳優)

1995年7月14日、福島県生まれ。舞台『転校生』オーディションで抜擢され、その後も映画『ブレイブ -群青戦記-』(東宝)やドラマ『最愛』(TBS)、日本民放連盟賞ドラマ『チャンネルはそのまま!』(HTB)などに出演。現在「SOMPOケア」、「ソニー銀行」、「雪印メグミルク プルーンFe」、「コーエーテクモゲームス 三國志 覇道 」のCMに出演中。趣味は読書、イラストを描くこと。Twitter〈@miyashitakanako〉Instagram〈miya_kanako〉

Twitter:@miyashitakanako

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【アミューズWEBサイト公式プロフィール】

みやしたかなこ

最終更新:2023/02/10 15:26
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