『あのこは貴族』他者の外側ばかりに目を向け判断される世界の中でどう生きるか
#宮下かな子
「好きなタイプは?」と質問されることは公私ともによくあるが、いつも、無難な答え方だよなぁなんて思いつつ、「家族思いな人」「リスペクトできる人」とか、最近だと「食べることが好きな人」とか。いろいろ答えてきた。だけどいまいちパッとしなくて毎回その質問をされると、もっと私らしい答え方ないかな、なんてゆるゆる探していたんです。
そんな私、とある映画を観ていた時に〝こんな男性は絶対に嫌だ!〟な会話に出会いまして。それが、トマト育ててみたい、という妻の言葉に、「買ったほうが早くない?」と言う夫。
私、これ言われたら絶対に嫌だ。つい先日、4月に仕込んだお味噌が半年かけてようやく完成したのですが、手作り味噌を「買ったほうが早くない?」って言われたらすごくショック受けます。
手作りの温もり感がある物や、作る過程を楽しむことが好きな私からしたら、それを理解してもらえないと無理だなと。それが第1条件かもしれないと、映画を観ながら思いました。
もし相手も〝作ることが好きな人〟だったら、一緒に楽しめて、きっと大鍋3つ分の大量の豆を笑顔で潰してくれるんじゃないかなと思うけど、きっと男性は面倒に思う人が多いだろうから、そこまでは求めませんので笑) 。せめて、作ることが好きな私を理解してくれる人だったら嬉しいな。映画鑑賞しながら長年の小さなモヤモヤが解決されました。
さて、今日はその会話が登場した作品をご紹介。岨手由貴子監督の『あのこは貴族』です。昨年豊作揃いだったのに見逃していた作品たちが、ちょうど今配信が始まっていて本当に有り難い。気になった方は、是非に。
〈あらすじ〉東京生まれの箱入り娘・華子(門脇麦)は、結婚を考えていた彼と別れ、相手探しに奔走。家柄の良い弁護士・幸一郎(高良健吾)との結婚が決まり、順風満帆だったが……。一方、地方出身で名門大学の入学を機に上京してきた美紀(水原希子)は、学費がなく夜のバイトを始めるも大学中退。そんな華子と美紀が、思いもよらぬ形で出会って……。
原作は私も大好きな山内マリコさん。他作品『ここは退屈迎えに来て』(幻冬舎文庫)では、山内さんの出身地・富山県を舞台に、地方生活の窮屈さを描いていますが、今作も東京と地方が対比として描かれていて、家柄や出身、職業等によって線引きされる社会に焦点を当てたお話です。
地方出身の私としては、共感できることがとても多くて。大学が都内の私立女子大だったのですが、都内出身の実家暮らしの子が大半を占めていて、ただでさえ違いを感じるのに、中には内部生のしっかりお嬢様もいたりして。
入学当初はグループでわいわいしていたけど、徐々に窮屈に感じるようになって、後半は図書館で1人でお昼を食べてたな。大学時代の自分を思い出しました。
劇中、親からの援助が困難になっても、それでもどうにか、努力して辿り着いたその場所に食らいつこうとする美紀の意思が、内部生の優雅な姿を遠くから見つめる横顔から感じられて。美紀を演じる水原希子さんの、内側から溢れる強さがとても美しかったな。
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