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『関ジャム』「原由子は桑田佳祐にとっての灯台である」サザンの“頭脳”原由子特集!

原由子の声が嫌いな人は、世の中に原由子しかいない

 本間は、原のボーカルを語る上で欠かせないポイントとして「ダブルトラック」を挙げた。レコーディングの際、同じフレーズを2回歌って重ねる多重録音のことである。いわゆる、“1人ユニゾン”だ。

 ダブルトラックの代表選手といえば、My Little Lover、小松未歩、寺尾聡、ジョン・レノン、オジー・オズボーンなどがおり、原もボーカルを録音する際は、多くの楽曲にこの手法を取り入れている。

原 「『私はピアノ』(1980年発表の楽曲)のレコーディングの前に、『試しにダブルにしてみたら?』ってどなたかが言ってくれたんですね。それで、ダブルにしてみたら『嫌いな声なんだけど、ダブルにすると意外にいいかも』ってちょっと思えるようになってはいたんです。それで、『私はピアノ』でダブルにしていただいて、だいぶ歌い方がわかったっていうのか、『私の声、変な声だけど、こういう歌い方をすれば結構いいんじゃないかな』って、やっと思えるようになったんですね」

――最初は、自分の声に違和感がおありだったんですか?

原 「そうですね。やはり、変わってる声ですし。初めてレコーディングして自分の声を聴いたときは、もうショックで。『こんな声のはずじゃなかった』って思ったんですけど(苦笑)。でも、今ではそんな変な声でよかったなって思ってます」

「自分の声が嫌い」は、多くの歌い手が抱きがちな感情である。大抵のボーカリストは、そう思っている。ただ、原由子の声が嫌いな人なんて、世に原由子しかいないのではないか?

桑田佳祐「原由子は桑田佳祐にとっての灯台である」

 桑田は、31年ぶりの原のソロ・アルバム『婦人の肖像 (Portrait of a Lady)』について、こうコメントした。

「またいつか(原のソロ・アルバムを)やろうと言ってるうちに、時間が経ってしまっていました。サザンの活動も40年以上になり、彼女のシンガーソングライターとしての卓越した才能を、今この時代にちゃんと作品としてリリースするべきだと強く思いました」(桑田)

 さて、桑田にとって原由子の存在とは?

「44年の航海の中で、彼女はサザンオールスターズの羅針盤であり、桑田佳祐にとっての灯台であると思う。たぶん…」

 あんなキャラクターの桑田が「灯台」と口にすると、変な意味を連想しそうになるが、違う。これは、周りがちょっと気恥ずかしくなるくらいの公開ラブレターである。最後に「たぶん…」と付けるあたりが、桑田は可愛い。「たぶん」はたぶん、照れ隠しだ。こんなに才能のあるミュージシャンが、ほとんど桑田佳祐としか仕事をしてこなかったという事実。桑田はすごく幸せ者だと思う。

 ふらりと関内へ天ぷら(原の実家は老舗天ぷら屋)を食べに行きたくなるような、今回はとても濃密な特集だった。この勢いのまま、本人熱望の桑田佳祐特集へ続いてほしいと願うばかりだ。

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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最終更新:2022/11/06 20:00
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