『機動戦士ガンダム 水星の魔女』が熱狂的な支持を得る理由は?
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毎週日曜日17時から放送され、各種配信サービスでも見放題のテレビアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』が話題沸騰だ。
毎週のように「名言」がTwitterのトレンドにあがり、愛に溢れたファンアートや「もしも」を描いた二次創作のマンガもSNSに数多く投稿されている。アニメのネット配信が台頭する時代に、リアルタイムの放送を追う楽しさや喜びがSNSで可視化されているのだ。
なぜ、本作が幅広く熱狂的な支持を集めたのか。それは、過去の『ガンダム』シリーズを全く知らなくても楽しめること、若者が共感しやすい悩みを描いていること、キャラクターの「関係性」を推した内容であることなどが大きな理由だろう。さらに詳しく、魅力を記していこう。
まるで「ヤンキーマンガ」のような決闘と「親に反発する」構造
この『水星の魔女』の最大の特徴は「学園もの」であることだろう。主人公の17歳の少女スレッタ・マーキュリーは、モビルスーツ(巨大ロボット)のパイロット科2年生として高等専門学園に編入してくるのだが、そこでは生徒たちによる大切なものを賭けた「決闘」が行われていたのだ。
決闘で優劣をつける様はまるで「ヤンキーマンガ」のようであるし、結婚相手の女性までも「トロフィー」と呼ぶ様は映画『最後の決闘裁判』(2021)も連想させた。もちろん、それが劇中で良いこととして扱われるわけがなく、経営戦略課2年の少女ミオリネ・レンブランもまた一方的に婚約を決められたことに憤り、学園からの脱走を試みているし、決闘のシステムそのものにも強い嫌悪感を示している。
同時に、そこには「子どもが親に反発する」という構図もある。ミオリネは支配的かつ矛盾した言動をする父親に面と向かって批判をしているし、初めこそ高慢不遜に思えたパイロット科3年生の御曹司グエル・ジェタークは、父親からのひどい扱いや、自分の実力や努力が正当に評価されないこと、さらには自分の意志も顧みずに不正が行われていることへの強い怒りを覚えている。彼もまた、大人の事情や学園のシステム、もっと言えば男性権威主義的な価値観を押し付けられた犠牲者のようにも思えてくるのだ。
ここまで極端でなくとも、学校や周りの大人から一方的な価値観を押し付けられるというのは、今も昔も子どもが普遍的に抱えている悩みだろう。「ここだけが世界の全て」である学園の中で、もがき苦しみ、大切な「何か」を掴み取ろうとするキャラクターそれぞれに、心から感情移入できるようになっているのだ。
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