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日刊サイゾー トップ > カルチャー > 映画  > 『水星の魔女』に熱狂する理由

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』が熱狂的な支持を得る理由は?

個性的で魅力的なキャラクターたちの「関係性」の魅力

 本作に強い思い入れができる理由は、キャラクターそれぞれが個性的かつ魅力的、かつ話が進むにつれて「違った内面」が見えてきて、さらには誰が誰のことをどう思っているかという「関係性」がスピーディーに変化していくことにもある。

 もっとシンプルに言えば、編入生のスレッタに、さまざまな生徒が積極的にアプローチをしたり、はたまた対立したりもする、(ヤンキーマンガかと思いきや)実は「学園ハーレムもの」的な面白さもある。彼女は一見するとオドオドしていて気が弱そうにも思えるが、実は自分の意思をはっきりと告げる性格の持ち主であり、それが学園のシステムや大人の価値観に支配されていた生徒たちのそれぞれの心を揺さぶることになる。

 そのスレッタは視聴者から「たぬきちゃん」という愛称がつけられるほどにかわいらしくもあるし、毎週のように誰かから「餌付け」をされたり、あるいは敵意をぶつけられる様もハラハラさせる。それでいて「あっこいつもスレッタに惚れたな」と思える瞬間や、彼女を巡っての三角関係、いや四角、いや五角以上にもなる、熾烈な「スレッタ取り合いバトル」が勃発することにもニヤニヤできるのだ。「こういうカップリングや展開があったらいいのに」という妄想を具現化した二次創作が捗るのも当然である。

 さらには、キャラクターの(名言がTwitterのトレンドにあがるほどに)極端な言動に笑ってしまうものの、そこにこそ彼ら彼女らの本質が表れていることも面白い。例えば、個人的な推しキャラであるグエルが3話のラストに(勢いで)言ったこと、あるいは4話で良い意味でテンプレなツンデレなセリフを放ったこと、5話でスレッタがデートをすると知った時の言葉には大笑いしてしまったが、同時に彼の強い意志や内面を知れたことにも感動があった。「ニヤニヤしながらアツい想いを持つキャラクターを応援できる」ことも、この『水星の魔女』の大きな魅力だろう。

「今のガンダム」「今のアニメ」としての成功作

 『水星の魔女』の岡本拓也プロデューサーは、社会科見学で来ていた10代の子どもたちから「ガンダムは僕らに向けたものじゃない」と言われたことにショックを受け、シリーズが長く続いた『ガンダム』が若い世代にとって入りづらくなっている現状を鑑みて、彼も共感しやすくなるよう「学園」を舞台にする話が出たのだと、アキバ総研のインタビューで語っている。

 女性が主人公であることも『ガンダム』のテレビアニメシリーズでは史上初のことであるし、男性権威主義的なシステムや価値観への批判が込められていることも、現代に作られるエンターテインメントの「らしさ」だ。もちろんモビルスーツ同士のバトルは大迫力であり、アニメーションそのもののクオリティが高い。岡本プロデューサーの想いが見事に結実した、若者も大人も楽しめる「今のガンダム」「今のアニメ」としての成功作だと断言できる。

 ちなみに、本作は本編の他に、その前に放送&配信されていた「プロローグ」があり、こちらはわずか4歳の少女が言うセリフが、良い意味で「人の心がない」「鬼畜」などと話題となっていたりもしていた。そこでは本編の背景について、「こういうことではないか」と観客に考察させる余地も残している。ある意味では「したたか」までに、ネットで話題になることを計算して作られた作品であり、それもまた大いに成功していることも間違いない。

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