「餃子の王将社長殺害事件」の裏側(2) 疑惑の人物と2人の故人
#餃子の王将 #工藤会
「餃子の王将」が全国展開していくにあたって、メガバンクからの約300億円もの巨額融資を調達したといわれる人物が存在する。それが、福岡県出身の故・上杉佐一郎元部落解放同盟中央執行委員長だ。
上杉委員長と、「餃子の王将」を運営する王将フードサービスの創業者で初代社長である故・加藤朝雄氏とは同郷ということもあり、2人を知る多くの人が、その関係性は一心同体ともいえるほどの昵懇ぶりであったという認識を持っていたという。
その上杉委員長には、勘当状態にあった異母弟が存在する。その人物こそが、10月26日に京都府警から任意の事情聴取を受けたX氏だ。通常、突発的に起こった事案でもない限り、わざわざ土曜日に当局が任意で事情聴取を行うことは少ない。それだけ今回の事情聴取には、深刻な事情があったといえるだろう。
ただ、X氏にとっては、これが初めての事情聴取ではなかった。
2013年12月19日早朝、当時、王将フードサービスの社長だった大東隆行氏(当時72歳)が射殺された、いわゆる「餃子の王将社長殺害事件」が発生して間もなく、X氏は京都府警から任意の事情聴取を受けている。
さらに、事件の背景について、何らかの事情を知っているのではないかと睨んだ「週刊文春」もまた、X氏に直撃取材したことがあった。X氏が設立に関与した福岡県内のゴルフ場の存在が、殺害事件の背景にあるのではないかと考えられていたのだ。
X氏が福岡県内にゴルフ場をオープンさせた際、王将サイドが惜しみない経済的支援をしていたことは、「社長殺害事件」を受けて公表した、王将の第三者委員会の調査報告書でも明らかにされている。
その報告書によれば、その福岡県のゴルフ場では、王将の取引先などで発足された親睦団体「王将友の会」のゴルフ大会が開催されていたほどで、同会の設立発起人はX氏であった。
前述の通り、王将が全国展開した際、上杉執行委員長は巨額な資金を調達しており、王将もまた、X氏がゴルフ場の経営を行うと知るや、その支援に尽力している。それは持ちつ持たれつの関係性であったといえるだろう。
そんな両社の関係性に、亀裂が生じることになったのは、上杉氏と加藤氏の2人の死が原因だったようだ。
これを機に、王将が抱えていた“不適切な関係性”を精算するための急先鋒となって、大鉈を振るったのが大東氏であった。つまり大東氏は、社長に就任すると、X氏との間にあった不透明な金の流れを断ち切ろうと動き出したのだ。
そんな中で事件は起きることになってしまった。
巨大な利権がかかわる関係性を、突如、大東氏の代で断ち切ろうとすれば、それに反発する勢力によって何らかのハレーションが起きたとしても、おかしくはないだろう。
事実、それまでの背景や流れを考慮した際、X氏が事件に関するなんらかの事情を知っているのではないかと、京都府警も推測したのだろ。だからこそ当局サイドは、大東氏が殺害されてからまもなく、X氏への事情聴取を行なっているのだ。
京都府警は、今回の田中幸雄容疑者の逮捕で事件の幕を下ろす考えは持っていない。なぜならば、田中容疑者と王将サイドに直接的な関係性はなかったからだ。一方、大東氏の殺害に使用された拳銃は、25口径のイタリア式のリボルバーだと見られている。この拳銃と同様のものが、当局がかつて工藤會の武器庫を捜索した際に押収されている。
仮に田中容疑者が実行犯ならば、過去の事件から推測しても、福岡県を拠点とする工藤會がなにかしらの組織的関与をしていたと、当局が考えても不思議ではない。京都府警は、田中容疑者に対する指揮系統を明らかにし、事件の全貌を解決したいはずだ。
(文=沖田臥竜/作家)
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