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マグロ養殖で名を馳せた近畿大がまた! 今度は3大珍味キャビアで驚きの発見

マグロ養殖で名を馳せた近畿大がまた! 今度は3大珍味キャビアで驚きの発見の画像1

 世界の“3大珍味”に例えられるキャビア、フォアグラ、トリュフ。その高級食材キャビアが安価で食べることができるようになるかも知れない。マグロの養殖などで有名な近畿大学の水産研究所は9月28日、世界で初めて「メスしか生まない“超メス”」の存在を証明したと発表した。https://kindaipicks.com/article/002542

 キャビアはチョウザメの卵巣をほぐしたものの塩漬け。チョウザメは、メスとオスが1:1で存在し、外見では雌雄を見分けることができない。このため、キャビアを生産するための養殖では、生殖腺が発達して性別が判断できるようになるまでの数年間、キャビアの生産できないオスも飼育するしかなく、生産効率が大きな課題となっている。

 今回、研究グループはメスの単性養殖の実現(全メス生産)をゴールとして、雌性発生による超メスの作出に取り組んだ。

 多くの生物は、父親由来・母親由来の2セットの染色体を持って生まれてくる。チョウザメの性を決定する染色体はZとWで表わされ、Z染色体だけを持つオス(ZZ)と、Z及びW染色体を持つメス(ZW)が存在すると考えられている。

 これは、メス由来の遺伝情報のみから個体を発生させる「雌性発生」により生まれたチョウザメの中には、W染色体だけを持つ超メス(WW)が存在することを示唆しているが、その存在は証明されていなかった。

 そこで、研究チームはチョウザメのオスとメスから採卵・採精し、精子に紫外線を照射し、受精能を有したままオス親由来の染色体(遺伝情報)を破壊する精子の紫外線(UV)処理と、受精卵を温水に漬け、メス親由来の染色体(遺伝情報)を倍化させる受精卵の温度処理を行った。

 これを組み合わせたチョウザメを継続飼育して生残率を算出するとともに、チョウザメの全ゲノム情報を基にオス、メスそれぞれに特異的なDNA配列を同時に検出するPCR検査法により遺伝型を判別する方法を開発した。この結果、W染色体だけを持つ超メスの作出・判別することに世界で初めて成功した。

 これまで研究チームはチョウザメ稚魚の鰓粘液(えらねんえき) を用いた雌雄判別を可能しており、3月にはチョウザメのオス稚魚を大豆イソフラボンの配合飼料で養殖することで、メス化させることに成功している。

 この実験ではサプリメントとしても市販されている大豆イソフラボンの成分「ゲニステイン」を配合したえさを、配合量を変えて3つの稚魚グループに180日間与えた。その結果、最も多く配合したグループでは8尾中8尾が卵巣を持っており、そのうち5尾は遺伝的にはオスだったことから、メス化したことが判明した。このように大豆イソフラボンを与えて全メス化に成功したのは日本初だった。

 このように、研究グループではチョウザメのオス・メスの判別法、オス稚魚のメス化、さらには今回のW染色体だけを持ち。メスしか生まない超メスの発見と、研究を進めている。

 オス稚魚のメス化、あるいは超メスを選別し親魚まで育成して採卵することができれば、採卵から養殖できる稚魚はすべてがメスとなるため、養殖によるチョウザメのキャビア生産の効率は飛躍的によくなり、さらに大量のキャビアが生産できるようになれば、“高級食材”であるキャビアが、庶民が手軽に食べることができるようになるかも知れない。

 先行しているマグロの完全養殖である近大マグロも、まだまだ、庶民が安価で食べられるような状況にまでは至っていないものの、同大水産研究所の様々な取り組みが実を結び、安価にマグロやキャビアを食べれるようになることを期待したい。

 

 

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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Twitter:@tohrusuzuki

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最終更新:2022/10/31 09:00
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