『君の名は。』新海誠監督が描き続けてきた”男女の距離”が時空をも超え大ヒット
#金曜ロードショー #しばりやトーマス #金ロー
『君の名は。』でもまた“男女はすれ違い”続ける……。
このように、未成年の淡い恋の行方を描いてきた新海が初めて「歳の差の恋」に挑んだのが『言の葉の庭』(2013年)だ。
高校生のタカオは靴職人を目指しており、雨の日の午前は学校をサボって公園にある庭園のベンチで雨宿りをする。ある日、いつものように庭園のベンチに行くと缶ビールを飲みながらチョコレートをつまみにする年上の女性、ユキノに出会う。自分も仕事をサボっているというユキノに見覚えがあるような気がするタカオにユキノは短歌の一節を告げるがタカオにはそれが理解できなかった。
雨の日の午前だけという二人の交友は続き、タカオはやがてユキノのための靴を採寸する。夏休みになるとタカオは進学のための学費を稼ぐバイトに明け暮れ、庭園に行かなくなったのでユキノと会うこともなくなった。
2学期になり登校したタカオは、ユキノが同じ学校の古文の教師であったことを知り、彼女が生徒とのトラブルで退職すると聞かされる。授業の担当が違っていたために会わなかったのだが、ユキノはタカオの事を知っていて、自分は古文の教師だということを万葉集の短歌でさりげなく伝えていたのだ。
同じ学校で顔を合わせていたはずなのに、その事に気づかず、年上の人とは距離がありすぎるので近づけないと思っていたのに、思い人はずっと近い距離にいたということに気づかない、すれ違いだ。
これまでの作品で男女の様々な近くて遠い距離、すれ違いを表現してきた新海はついに『君の名は。』で物理的な距離さえ飛び越え、時空を超越する。それでも二人はすれ違う。入れ替わりを通じて、出会っているはずなのに、名前すらまともに思い出せない二人は互いの足跡をたどって、やがておとずれる破局を回避しようとする。直接会わずに、思いだけを通わせるやり方で。
同じテーマを何度も繰り返して突き詰める、作家稼業の総決算でもある『君の名は。』は単館系の上映が主だったこれまでと違い、全国約300館規模で拡大公開され、頂点に達した。
パソコンのエロゲーのオープニングをつくって、セカイ系自主製作映画をコツコツとやっていた人間が、日本アニメの頂点に立つ! 新海映画は単なるヒット作、話題作ではない。どんなにすれ違っても、遠く離れても、夢見ることを捨てられない。これはすべてのオタク、サブカル野郎の見果てぬ夢なのだ。
まあ、新海監督は「俺はそんなオタクじゃない!」っていうかも知れないけど……これもきっとすれ違いなんですね。
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