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日刊サイゾー トップ > エンタメ  > 静かに輝いた天性の「フリ師」

仲本工事さん、お笑い猛者集団「ドリフ」の中で静かに輝いた天性の「フリ師」

相手が志村でも高木ブーでも完璧にフリをこなす仲本工事

 この複数人コントの「フリ」というのは、誰にでも出来るわけではない。その後に出てくるボケほど個性を持っていてはいけないし、ツッコミや回しほどの説得力を持っていてもいけない。ほどよく無個性で、ほどよくキャラクターが立っていて、ほどよく笑いが取れて、そして他のボケ役を引き立たすことに徹せるかどうか。

 お笑いを職業にしている人間はどうしても、自身で笑いを起こしたくなるもの。しかし「フリ」の段階でそれをしてしまうとコントが成立せずに、コント1本丸ごと潰してしまうことになる。本来ならその「死に役」という名の通り、自分の感情を押し殺して役に徹しなければならないのだが、仲本さんに関してはそうでは無かったようだ。

 仲本工事さんを調べてみると、どうやら彼は笑いに対して他のメンバーほどストイックではなく、自身でこういうお笑いがしたいとか、こういう風に笑わせたいと発言することはほどんど無かったようだ。

 その半面、与えられた役割をそつなく器用にこなすタイプで、相手が志村さんだろうが高木さんだろうが、その個性をうまく引き出し笑いに繋げられるという万能型だった。元芸人として分析すると、仲本工事というバランサーがいなければ強烈な個性がぶつかり合う「ザ・ドリフターズ」は成立していなかっただろう。

 これだけ人を笑わせ、これだけ人を目立たせてきた人が、最終的に笑えない生活を送り、悪い意味で目だってしまうとは、なんと数奇な人生だったのだろうか。

 ツイッターに投稿された仲本工事さん最後のツイートは

10月14日『今日は、高崎タカシマヤ「志村けんの大爆笑展」にブーたんと行ってきました。笑顔も二倍です。楽しかったなァ。志村も喜んでくれたかな。』

という、何とも切なく何とも悲しくなるものだった。

 しかし志村さんが喜んだかどうか直接、天国で聞けるという意味ではもしかしたら良かったのかもしれない。

 天性の「フリ師」であり、偉大なるコメディアンだった仲本工事の遺伝子は間違いなく今のお笑い界に引き継がれている。

 心からご冥福をお祈りします。

 

 

檜山 豊(元お笑いコンビ・ホームチーム)

1996年お笑いコンビ「ホーム・チーム」を結成。NHK『爆笑オンエアバトル』には、ゴールドバトラーに認定された。 また、役者として『人にやさしく』(フジテレビ系)や映画『雨あがる』などに出演。2010年にコンビを解散しその後、 演劇集団「チームギンクラ」を結成。現在は舞台の脚本や番組の企画などのほか、お笑い芸人のネタ見せなども行っている。 また、企業向けセミナーで講師なども務めている。

Twitter:@@hiyama_yutaka

【劇団チーム・ギンクラ】

ひやまゆたか

最終更新:2022/10/29 07:00
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