光石研、高橋克実、橋本じゅんドラマ『帰らないおじさん』が提示する日本の明日
#社会 #ドラマ #少子高齢化 #BS‐TBS
近年、働き方改革が進み、社員に長時間労働を強いる会社は着実に減りつつあるが、これまで何十年も猛烈に働いてきたサラリーマンの中には、「急に“定時で帰れ”と言われても……」と戸惑う人もいるだろう。
そんなおじさんたちの“アフター定時”を描いたドラマが、10月から放送中の『帰らないおじさん』(BS-TBS)だ。主役は光石研、高橋克実、橋本じゅんの3人。彼らのテーマは“お金を使わないこと”である。
「同作は『イブニング』(講談社)に連載された西村マリコ原作の漫画をドラマ化したもの。主演の3人はそれぞれ銀行の支店長、スーパーの店長、スポーツ用品メーカーの営業部長ですが、週に1回集まってやることは少年時代にやったことばかりです。
第1回で挑戦したのは、拾ってきた棒きれを放り投げて、倒れた方向に進む散歩で、第2回は野球盤で真剣に勝負。第3回は自転車に乗って町内を駆け回る“ツール・ド・ご近所”に挑みました。
ドラマ界では近年“おじさん”が大ブームで、『孤独のグルメ』、『バイプレイヤーズ』(テレビ東京系)、『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)など、立て続けにヒット作が登場。『帰らないおじさん』も、その系譜に入る作品です」(テレビ情報誌記者)
ドラマや映画は美男美女がやるもの──という常識を覆す、「おじさんドラマ」の大流行。『帰らないおじさん』はあくまでもフィクションで、しかもコメディタッチの内容だが、高齢者問題を追いかけるフリー記者によれば「現実はもっとシビア」だという。
「同作では、大人が子どものように遊ぶことがほほえましく描かれていますが、現実に目を向けても、娯楽施設は高齢者ばかり。ゴルフ場、ボーリング場、テニスコートなどのコア利用者は元気なリタイア組ですし、カラオケやパチンコ屋も目につくのはお年寄りが多いです。若者が集う場所というイメージが強いゲームセンターも、平日はお年寄りだらけです。漫画喫茶も、高齢者パックを用意する店が現れ始めました。
これはコロナ前の話ですが、風俗店では年金支給日の前後で明らかに客の入りが違っていたそうです。高齢者が元気なのは社会全体にとって喜ばしいことですが、同時に若者の居場所がなくなっているようにも感じられます」(フリー記者)
ゲームセンターはとりわけ意外だが、「コインゲームコーナーなどは高齢者だらけ。1日中やっている人も多い」のだとか。確かにヒマを潰すにはうってつけだろう。
若者の居場所を侵蝕するジャンルはまだまだある。
「洋楽ロックのコンサートは還暦前後がボリュームゾーンですし、アイドルのライブ会場でも目立つのは財力がある中高年。テレビゲームの第一世代はぼちぼち60代を迎えるので、テレビゲームの主力ユーザーも遠からず中高年になるでしょう。
現在、還暦前後の世代は小さい頃から漫画、アニメ、テレビゲームにどっぷり浸って育ってきており、人口的にも人数がとても多いので、これからますます、その世代に向けたビジネスは活発化していくでしょうね。彼らはバブルも通過しており、消費意欲も旺盛ですから。美術館や博物館ではすでに、そういった世代を当て込んだ企画展が大流行です」(マネー誌記者)
若者がスマホばかり見ているうちに、気付いたら遊ぶ場所は中高年に占領されていた──ということか。そんな今の若者が年を取ったら、どこで何をするのだろうか……?
藤井利男:1973年生まれ、東京都出身。大学卒業後に週刊誌編集、ネットニュース編集に携わった後、独立。フリーランスのジャーナリストとして、殺人、未解決事件、死刑囚、刑務所、少年院、自殺、貧困、差別、依存症といったテーマに取り組み続けてきた。趣味はダークツーリズム。
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