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「第35回東京国際映画祭」攻めた激奨作品4本を映画ライター・バフィー吉川が解説!

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 今年も10月24日から11月2日まで「第35回東京国際映画祭」が開催されている。コロナ過で自粛モードだった前年までと比べると、今年は3年ぶりにレッドカーペットも復活し、華やかな活気を取り戻している。今年は丸の内TOEIや丸の内ピカデリーなど上映会場も増え、より広い規模での開催となった。

 映画祭の上映作品には、のちにNetflixなどサブスクで配信されるものもあれば、日本でも劇場公開されるものもあるが、今回を逃したら観ることができない作品も多い。会場に足を運ぶ醍醐味は、そういった作品が観られるということでもある。

 10月28日公開の『アムステルダム』や、11月11日公開の『ドント・ウォーリー・ダーリン』など劇場公開がすでに決定している作品の先行上映はあとで観れるし、12月9日公開で二宮和也主演の『ラーゲリより愛を込めて』など日本の作品であれば、小規模だとしても公開されるだろう。だからこそ映画祭では、アジアや中東、ヨーロッパ系の作品を中心に観るのを推奨する。

 今回は、映画ライター・バフィー吉川がおすすめする「第35回東京国際映画祭」上映の4作品を紹介する!!

■『私たちの場所』(「アジアの未来」部門)

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【作品解説】(公式サイトより)

トランスジェンダーの二人組が転居先を探そうとするが、性的マイノリティをめぐる不寛容と差別の壁は厚く、家探しは難航する。個人の監督名を冠しない注目の創作集団、エクタラ・コレクティブによる集団製作。

 インドでは長い間、同性愛はタブーとされてきた。性的マイノリティー(LGBTQ)の存在についても、保守的な地域では口にすることも許されないという現状は今も変わらない。

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 これはインドに限ったことではなく、例えばアメリカでも、同性愛者を宗教上の都合としてしまえば、問題と見なされる州などがあるのと同じだ。

 ただ、アメリカではそんな理不尽な現状での訴えを映画やドラマを通して描かれることがあるのに対して、インドにおいては、それすらも許されなかった。暗黙のルールとして、LGBTQが関わるような作品は制作できない。そんなモヤモヤ感が、インドのブロマンス映画人気につながった側面も、多少ながらあるだろう。

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 近年、インドでも都会のリベラルな地域ではLGBTQをオープンにすることも少しずつ許容されてきている。しかし、現状としてはまだまだ厳しい側面も……。『私たちの場所』は、そんなインドの状況、まさに”今”を描いた作品である。そして、そういった作品が制作されるようなになったこと自体が、大きな前進ともいえるのだ。

『私たちの場所』
制作国:インド
監督:エクタラ・コレクティブ
出演:マニーシャー・ソーニー、ムスカーン、アーカーシュ・ジャムラーほか
91分、カラー、ヒンディー語、英語・日本語字幕、2022年、インド

■『1976』(「コンペティション」部門)

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【作品解説】(公式サイトより)

ピノチェト政権下のチリ。主婦のカルメンは司祭からひとりの若い男をかくまうように頼まれ、了承する。だが、そのことは彼女の生活を大きく変えることになる。独裁政権下の静かな恐怖を描いた作品。

 『マチュカ 僕らと革命』(2004)や、『NAKED BODY ネイキッド・ボディ』(13)などに出演する、女優のマヌエラ・マルテッリの長編監督デビュー作。

 1973年から始まった、元大統領のアウグスト・ピノチェトによる独裁政権下のチリが舞台。タイトルの通り、その独裁政権となってからの3年後が描かれる。日常生活が破綻し、常に漂う緊張感の静かなる恐怖を描く。

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 マヌエラ・マルテッリ自身が1983年生まれということもあって、独裁政権下で子ども時代を過ごした経験が少なからず反映されている。

 ピノチェト独裁政権を描いた作品としては、まさに独裁政権の始まりを描いたエマ・ワトソン主演の『コロニア』(15)や、逆に政権の終焉を描いたガエル・ガルシア・ベルナル主演の『NO』(12)なども。

『1976』
制作国:チリ/アルゼンチン/カタール
監督:マヌエラ・マルテッリ
出演:アリン・クーペンヘイム、ニコラス・セプルベダ、ウーゴ・メディナほか
97分、カラー、スペイン語、英語・日本語字幕、2022年、チリ/アルゼンチン/カタール

 

■『孔雀の嘆き』(「コンペティション」部門)

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【作品解説】(公式サイトより)
妹の心臓手術のために大金が必要となったアミラはとある会社で働き始める。それは望まれない妊娠で生まれた子供を外国人に斡旋する組織だった…。スリランカの逸材が描き出す社会のダークサイド。

 妹の心臓手術のために働き始めた仕事が、実は闇社会に通じていた……。

 命を救うために、命を売る……。養子斡旋という名の人身売買の闇に切り込んだ、暗黒版『ベイビー・ブローカー』(是枝裕和監督の韓国映画、2022年)のような物語だ。

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 やたらと暗い内容の物語ではあるが、それもそのはず。今作の監督、サンジーワ・プシュパクマーラの作風が毎回、毎回、とにかく暗いのだ。

 初監督作品『Igillena Maluwo(Flying Fish)』(11)では、スリランカの性暴力や腐敗政治などを描き、『Davena vihagun』(16)でもスリランカ東部の小さな村を舞台に、貧困から売春につながる構造を描くなど、スリランカにおける社会悪と戦い続けている映画作家である。

『孔雀の嘆き』
制作国:スリランカ/イタリア

監督:サンジーワ・プシュパクマーラ
出演:アカランカ・プラバシュワーラ、サビータ・ペレラ、ディナラ・プンチヘワほか
103分、カラー、シンハラ語、英語・日本語字幕、2022年、スリランカ/イタリア

 

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