高齢者の認知症、一部が後天性のADHDだったことが判明―治療薬も効果あり
#鷲尾香一
熊本大学の研究グループは9月27日、認知症と診断される中で、実は認知症ではなく、発達障害の一つである注意欠陥多動性障害が複数含まれていることを、世界で初めて報告した。その上、誤診されうる発達障害の高齢患者の約半数が、注意欠陥多動性障害の治療薬により症状が改善した。
https://www.kumamoto-u.ac.jp/whatsnew/seimei/20220927
研究チームは、高齢者で認知症のように誤診されうる発達障害患者がどの程度存在するかを明らかにする目的で、熊本大学病院認知症専門外来を認知症の疑いで受診した446人を対象に調査研究を行った。
具体的には患者をまず認知症の専門医が診察し、認知症の有無を見極めた中で否定的とされた患者を発達障害の専門医師が評価した。この結果、7人(1.6%)が後天的に顕在化した注意欠陥多動性障害(ADHD)であったことが判明し、さらにそのうち約半数にADHDの治療薬の効果があった。
実際の症例としては、これまで日常生活でそれほど大きな支障がなかった60歳前後の会社員が、徐々に物忘れや不注意が目立つようになり、認知症を疑われて認知症専門外来を受診した。詳細な検査や検証の結果、認知症ではなく、加齢により顕在化したADHDと診断された。さらに、ADHDの薬物療法後は物忘れや不注意の症状が改善し、復職することができた。
以上から、認知症と誤診されうるADHDの患者は決して“稀ではない”こと、先天的な疾患と考えられている発達障害が、加齢により後天的に顕在化する新しい可能性が示唆された。
さらに、認知症と誤診されうる発達障害の高齢患者の約半数は、ADHDの治療薬で症状が改善したため、適切に診断し治療を行うことで回復する可能性があることが明らかとなった。
研究チームでは、「発達障害と認知症では、治療薬や予後が大きく異なるため、その鑑別をすることの意義は大きいと考えられる」としている。
厚生労働省の認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)によると、12年に462万人だった日本の65歳以上高齢者の認知症人数は、20年には631万人、将来推計では50年には1000万人を突破して1016万人に増加すると見られている。
高齢者に占める認知症の割合も、12年の15.0%から20年には18.0%に上昇、25年には20%を突破して20.6%に、60年には34.3%にまで上昇すると推計されている。実に高齢者の3人に1人が認知症となる。(表1)
若干古いデータだが、14年の「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」によると、認知症の年齢別割合は65~69歳では2.2%だが、80~84歳では約25%が、85歳以上では半数以上の55.5%が認知症になっている。(表2)
WHO(世界保健機関)の15年の報告では、世界の認知症患者数は約5000万人で、毎年1000万人近くが新たに認知症となる。これは3秒に1人が新たに認知症となっている計算になる。
研究結果のように、認知症と診断された人のうち1.6%がADHDだと仮定すれば、日本の20年の認知症631万人のうち約10万人がADHDで、そのうち約半数の5万人が適切な治療により回復する可能性があることになる。
研究チームでは、「今後さらに、大規模な調査を行い、有病率を明らかにし、認知症に誤診されうる発達障害患者の存在を社会へ啓蒙することが必要。また、高齢者の発達障害を適切にかつ簡便に鑑別するツールの開発が急務だ」としている。
研究結果は、5月24日に英国科学雑誌「BMC Psychiatry」に掲載された。
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