オードリー若林正恭、日向坂46と変化と揺れのコミュニケーション
#オードリー #若林正恭 #テレビ日記 #日向坂46
若林正恭「人間ってね、コミュニケーションする動物だよ」
オードリーの特に若林は、自身の変化を積極的に見せたり語ったりする芸人である。人見知り芸人として注目された彼は、人見知りが少しずつ“改善”されていく過程を見せてきた。結婚したり子どもができたりしたことによる変化も、番組のなかで語ってきた。著書の形で、その変化のプロセスがより内省的に綴られたりもしてきた。
メディア上でそういうプロセスを見せる芸人は、どちらかというとテレビから離れがちだ。西野亮廣(キングコング)とか、中田敦彦(オリエンタルラジオ)などが典型的だろうか。彼らは徐々にテレビから距離をとって、“古いシステム”(テレビもそこに含まれる)に批判的な層からの支持を集める。距離をお金に変換する。
そんななかにあって、若林はテレビを相対的に捉えながらも、テレビのなかの芸人として活動を続ける。テレビのなかの芸人としての変化を語り続ける。そのあたり、芸人ではないけれどマツコ・デラックスのこれまでの言動の軌跡が重なる。
今回もまた、若林はそんな変化をカメラの前にさらす。「大人のお仕事」に気づくさまを見せる。収録を終えスタジオから立ち去るとき、「日向坂メンバーに普段言わないカッコいい言葉を去り際に言え」という課題を与えられた彼は、日向坂のメンバーに語りかけた。
「渡邉(美穂)が卒業して、ずっと永遠にできるものじゃないんだなって思ってて、みんなの人生のほんとに大切な時間のなかで、一緒に仕事させてもらえるんだなって。1回1回が大一番だと思って、伝説の番組つくってんだなと思って、臨んでいこうかなっていうふうに思いました。これからもいい番組つくっていこうや」
さて、番組は終盤。最後はオードリーが2人きりで車に乗る。若林と春日が2人だけで車に乗るのも久しぶりらしい。若林は今回の企画をふりかえる。
「みんな本番でエネルギー放出するから、(本番以外では)基本しゃべりたくないんじゃないかなと思ってたんだけど、企画とはいえ、スタッフさんとかメイクさんとか日向坂のメンバーに話しかけたら、番組が明るくなったなと思って。俺の負けだと思った」
オードリーの若林は自身の“負け”を認めた。そして、笑いながら語った。
「人間ってね、コミュニケーションする動物だよ(笑)」
若林は揺れる。負ける。時間とともに自身の考えや行動を変化させる。そんな若林が「人間ってね、コミュニケーションする動物だよ」と少し照れ笑いのようなものを浮かべながら語るのを聞くと、なるほど、コミュニケーションの本質、少なくとも良質なコミュニケーションの核のようなものはそこにあるのかもしれない、と思ったりもする。自分の考えや意見はほとんど変えずに他人だけを変えようとする、そんなコミュニケーションとは名ばかりの何かがあちこちで見られるなかで、改めて「オードリーじゃないと」と思ってしまう。
最後に、印象的なシーンについて。私が印象に残った場面のひとつは、挙動がいつもと違う若林を日向坂の影山優佳が収録の合間に追求するところだ。NHKの『プロフェッショナル』の密着がついているという若林に、影山は鋭く「ちがいますね」と切り込んでいた。無理やりにでも追求をかわしそうなこの場面。若林は「そうなの。よくわかるね」と早々に諦めて白状した。
この手の企画で、一部とはいえ途中でネタバラシをしてしまう流れはあまり見ない。いや、ドキュメンタリー色の強い今回の企画、あまりバラエティっぽく強引にごまかすのは適切ではない、という計算がはたらいたのかもしれない。影山のクレバーさの前で逃げられないと諦めたのかもしれない。が、揺れる、負ける、変化する若林、そんな彼のいうコミュニケーションを、このやり取りに見て取りたくなった。
いずれにせよ影山の、主人公の特殊能力や秘めたミッションを誰よりも早く勘づいてしまい、物語がはじまって早々に一般人ながら世界を守るための戦いに巻き込まれてしまう幼なじみ、という感じ。なんだか良かった。コミュニケーション云々みたいなことも書いたけれど、これが言いたかっただけかもしれない。
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