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『関ジャム』レビュー

Official髭男dismやVaundyが作る、アニメの世界観をリスペクトするアニソンの趨勢

「アニソン」と「アニメタイアップ」の曲は別もの

 冨田曰く、最近はミュージシャンのアニソンへの意識変化が起こっているらしい。

「J-POPの第一線で活躍しているアーティストが、ただ主題歌をやっているだけじゃなくて、ちゃんとアニソンをやってる。アニメのためにしっかりと考えられた、ちゃんと作品と作り手に対するリスペクトに溢れた曲を提供しているということが、すごく大事だと思います」(冨田)

 昔は……特に90年代は、まさに「ただ主題歌をやっているだけ」だった。『るろうに剣心』(フジテレビ系)の主題歌にはJUDY AND MARY「そばかす」があてられたが、そこには脈略が一切なかった。『SLAM DUNK』(テレビ朝日系)の主題歌だった大黒摩季「あなただけ見つめてる」には、バスケアニメの曲なのに「サッカーさえも好きになったわ」という歌詞が登場した。

 つまり、厳密にいうと「アニソン」と「アニメタイアップ」の曲は別ものなのだ。90年代の状況は、明らかに後者である。それらと比較すると、「銀河鉄道999」というド直球の曲を作ったゴダイゴがより尊く思えてくる。

 しかし、今は違う。声優やアニソン専門のアーティストではなく、一線級のJ-POPミュージシャンが作品の世界観に合ったアニソンを作っていると冨田は説くのだ。

 その代表格は、Official髭男dism。主人公・花垣武道が過去にタイムリープし、未来を変えるために奮闘するアニメ『東京リベンジャーズ』(テレビ東京系)の主題歌として、ヒゲダンは楽曲「Cry Baby」を提供した。曲全体で、実に10回も転調をする曲である。同曲について、冨田は以下のように評している。

「タイムリープものである『東京リベンジャーズ』の作品性を転調で表現している」(冨田)

 また、ヒゲダンのボーカル・藤原聡もこんなコメントを残している。

「この曲、フルで聴くとかなり転調を繰り返しているんですが、僕の中で『転調する』というのがタイムリープに近しいものを感じているんです」(藤原)

 続いて番組が取り上げたのは、『BEASTARS』第2期オープニングテーマに選ばれたYOASOBI「怪物」だ。

「ハイイロオオカミである主人公レゴシがウサギの女の子ハルと恋に落ちるのだが、一方で、肉食獣として食べたいという衝動に苦悩する。切迫感のある性急なビートとダークなエレクトロサウンドで肉食獣としての本能を表現し、歌詞では一見平和に見える世界の中で、大切な存在のために葛藤する苦悩を描いている」(冨田)

 正直、『BEASTARS』と「怪物」がそこまで合っているとは思わなかったが、楽曲の裏にはそんな意図があるらしい。あと、そもそもYOASOBIの楽曲自体に少し前のアニソンっぽい匂いが備わっており、それが心地よさにつながっている部分もあると思うのだ。YOASOBIといえば、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』(TBS系)のオープニングテーマとして提供された「祝福」も良曲だ。

『王様ランキング』第2クールのオープニングテーマである、Vaundy「裸の勇者」も話題だ。

「幼い主人公ボッジの心情や勇敢な姿だけでなく、耳が聞こえないという設定もダイレクトに歌詞に表現されていて、作品に対するリスペクトを感じる曲」(冨田)

 Vaundy自身、この曲について以下のようにコメントしている。

「アニソンには日本の魅力がたっぷり詰まっているんですよね。だから、そこをもっとポップス化できないかなっていうことを昔から思っていて。(中略)誰が聴いてもカッコよくて、でも、ちゃんとアニソンで……。アニメを見てから曲を聴いても、曲を聴いてからアニメを見ても味が濃くなるような曲にしようと気合を入れて作ったのが、『裸の勇者』です」(Vaundy)

 昔なら、「そばかす」のように曲が良ければそれでもうOKだった。でも、今は作品の解釈までアーティストに求められているというわけである。

サバンナ高橋 「たしかに主題歌を聴いて、このアニメの映像を見たら、アニメが見たくなりますね。その効果はメチャメチャあるわ」

冨田 「ああ、嬉しいですね。最大のPVですもんね、アニメのオープニング映像っていうのは」

「アニメのオープニング映像が最大のPV」、わかる気がする。その流れの大元には、TM Networkや大沢誉志幸、岡村靖幸らのアーバンなお洒落サウンドを導入した『シティーハンター』(日本テレビ系)がいる気がするのだ。その証拠に、TM Network「Get Wild」の最高のPVは実質、『シティーハンター』のエンディング映像のほうである。TM自身が香港で撮影した、アーティスト発のそれではない。

 アニソンの現状を紹介する機会として有意義だった、今回の特集。しかし、この日の『関ジャム』にTVerの見逃し配信はなかった模様。やはり、インターネットでのアニメの扱い(権利など)には高い壁があるのだと実感する。粛々と、いろいろ整備されてきている時代なのだ。

 

 

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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最終更新:2022/10/23 20:00
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