長渕剛「外国人に土地売るな」発言、中国人問題と掻き立てるメディアの過ち
#長渕剛
「この北海道という街は、その昔開拓民たちが一生懸命に開拓した街だ。お願いだからこの自然に満ち満ちたこの土地を外国人に売らないでほしい」
北海道・札幌芸術劇場でのライブで、歌手・長渕剛はそう観客に訴えた。国民的歌手がライブの場で“愛国心”を喚起する発言をしたことに、ネットでは賛否両論が巻き起こっている。
長渕剛のこの発言は、北海道を巡って活発化している外資系資本の進出をけん制する発言だ。「私たちの日本が外国人によって買い漁られている」。おそらく、長渕本人は日本の未来を憂う気持ちを純粋に吐露したかったのだろう。
ただこの発言にのっかるように一部メディアでは、財政破綻した夕張市、またリゾート地であるトマムなどの事例とともに、土地買収・開発をきっかけとした中国の政治的影響力の拡大を懸念する報道をはじめている。一方で、リベラル派からは「北海道はもともとアイヌの土地だ」という歴史を踏襲した反論の声もあがる。
たしかにそういう一面はあるのかもしれない。ただいずれも「ありえるかもしれない未来」や「二度と戻らない過去」を嘆く極論であり、現在の北海道の現実からは遠く離れすぎている気がする。
ニセコを開発しているのはオーストラリア系資本
ここで一大リゾート地として、バブル的な開発が進むニセコの例を挙げよう。メディアでは中国の政治的影響力拡大を暗に伝えようとせんとばかりに、「中国系資本が続々進出」などと報じることが多々ある。ただこれは一部誤りもあり、かつミスリードを招いてもいる。現地に詳しい日本人ディベロッパーのひとりは言う。
「ニセコやその周辺で最もビジネスを手広く行っているのは、オーストラリア人です。他にもシンガポール、マレーシア、香港、韓国、タイなどの海外資本が続々と流入しています。純粋な中国資本とするならば、全体のほんの数%にしか過ぎないでしょう。仮に“中華系”と強調するのであれば、少しは文脈として合っているのかもしれませんが……。そもそも同じ中華系でも国が違えば文化も商習慣も異なる。そういう報じ方が増えることには違和感しかありませんね」
地元の方々に話を聞いてみるに、「90年代のバブル崩壊後のニセコは、スキーが好きだけれどそれほどお金がない日本人の若者たちが、近隣の街で住み込みのバイトをしながらあししげく通うような牧歌的なゲレンデエリア」だったという。そしてそのなか「わずかながらスキー好きの外国人も混じっていた」そうだ。
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