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祝・シーズン7!『ねほりんぱほりん』レビュー

安室奈美恵は「ファットFIRE」? その真逆、「リーンFIRE」のギリギリ生活とその理由

FIREになるために、好きな彼女を“損切り”

 会社員時代、カツさんはアニメグッズを売却して資金を調達していたそう。加えて、彼女(交際4年、同棲2年)との別れも選んでいる。家賃や生活費について、カツさんが彼女の分もほとんど払っていたため、金銭的なことを考えて別れを決意したのだ。

「部屋でくつろいでるときに、将来の話をするタイミングがあって、『将来、どうする?』って彼女から聞かれたんです。それで『別れたいと思ってる』って言ったら、『私も断捨離するん?』って(苦笑)」(カツさん)

 長年の彼女を損切りしていたカツさん。FIREのために彼女を断捨離、か。サラリと、とんでもない表現をしているな……。なんと、番組はカツさんの元彼女・サヤカさんに話を聞きに行ったらしい。

「付き合ってる年数もまあまあ長かったんで、『将来、結婚するんじゃないかなあ?』と思ってたし、『FIREやセミリタイアで別れる必要ある?』って、なんとも言えない気持ちがありました(苦笑)。

 でも、私がそのとき、次の仕事を見つけ中っていうか金銭的負担をかけている自覚もあったんで。彼がお金を消耗したくないっていうのは情報として目に入ってきたし、そうなると申し訳ないっていう気持ちが自分にグッと強く出てきちゃって、『あ~、なんか苦しいなあ』と思うことはありました」(サヤカさん)

 結局のところ、彼女はカツさんと別れて正解だったと思うのだ。それは、カツさんも同様。大好きなアニメグッズを売るほど追い詰められていたし、どう考えてもサヤカさんとの同棲の維持は難しかった。カツさんが生活費を負担していたのに「私のことも断捨離する?」と言われたのも、それはそれでしんどい。もう、お互い別れるしかなかったと思う。

 会社で潰れずに生きる道を模索し、それが彼女との別れにつながった。「人生ってなんだろう?」と、深く考え込んでしまう。カツさんは「自分の面倒を見るのが精一杯」と、結婚をしない人生を心に決めたそうだ。

 それは、タイチさんも同じだった。

「FIREをしてしまった以上、結婚をすること自体がもう難しいと思っていて。昔、婚活していたことがあったんですけど、女性からは公務員や大企業の人が人気だったんですよ。ということは、女性は安定的な経済力を男性に求めている。なので、私みたいに無職になってしまった以上、女性にとって価値はゼロなので、もう結婚とかは期待してないですよね」(タイチさん)

 タイチさんは悟ったかのような口ぶりだ。事実、早期リタイアをしたら家庭を持つことは難しい。結婚は億単位の資産持ちFIREに限られる……という世知辛い現実が存在するのだろう。

山里 「とはいえ、『恋人がいたらなあ』と思うことありますか?」

タイチ 「たまに、ありますね。株主優待でサンリオピューロランドに年に6回無料で行けるんです。それでアトラクションに乗ったり、キャラクターと写真を撮ったりして。でも、周りの家族連れとかカップルと比較すると、寂しさや劣等感を少し感じちゃいます」

 聞いていて、こっちも虚しさを感じた。「なら、働いたほうがいいのでは?」ともよぎったが、それが普通にできない人たちだっている。「孤独と引き換えに自由を手に入れた」、彼らはそう考えているのかもしれない。

「リーンFIRE」が最も幸福度の高い選択だった

 カツさんとタイチさんは、会社を辞める際に不安はなかったのだろうか?

「FIREすることも不安だったんですけど、会社員を続けることもまた不安で。65歳まで働いてしまったら、たぶんその10年後ぐらいに寿命がくると思うんですけれど、後悔しそうだと思ったんですよね」(タイチさん)

「自分にとって何が1番幸せで、何が1番不幸せなのかをずっと毎日考えてたら、生活は最低限でも大丈夫。自分のやりたいことをちゃんとやることが、1番幸福度が高い選択肢になるんじゃないかなって」(カツさん)

 個人的には、「リーンFIRE」は無理のある生き方だと思う。でも、彼らにとってはその道が自分を保つ決断だった。だから、2人の決断は否定できない。生活が火の車になるか、働き続けて死んだように生き長らえるのか? どちらがいいかは、人それぞれの価値観だ。

 2人は、今後に不安はないのだろうか?

「正直、実はなくて。最悪、この資産が全部なくなっても『別にいけるかな』みたいな。DIYだとか、あとはそれこそ野草を摘んでいけば、お金がいらない生活もできるなというか。自信がついたし、『無人島に放り出されても自分でやっていけるぞ』と、考え方は変わりましたね」(カツさん)

「最悪、お金に困ってもUber Eatsとか雇われずにお金を稼ぐ方法はあるので、そういったことでお金を稼ごうと思ってます。経済的不安は、そんなでもないですね」(タイチさん)

 不安がないのは素晴らしい。そのバイタリティの強さは見習いたい。でも、健康体が永遠に続くわけではないし、気力・体力がなくなれば予定は全部狂ってしまう。40年後、野草摘みやDIYを今と同じ状態ではこなせないだろう。手数料のかさむUber Eatsが永遠に続くかどうかも不明だ。

 あと、極端なことを言えば、「そこまでして生き続ける理由があるのか?」という疑問にも行き当たりかねない。みんな、よくめげずに生きていけていると思う。

 実際に番組を見るまで、億単位の資産を持つFIRE、もしくはFIRE歴3年以上の人たちがゲストに来ると思っていた。だからこそ、今回は余計に見ていてつらかった。数年後、ゲストの“その後”を追加取材するとしたら、その頃のカツさんとタイチさんがどうなっているか、他人事ながら心配なのだ。

 たしかに、「ファットFIRE」「サイドFIRE、バリスタFIRE」より、「リーンFIRE」の数年後のほうが興味深くはあるけども……。

『ねほりんぱほりん』新シーズンの初回、しょっぱなから見ていて辛くなるテーマだった。

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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最終更新:2022/10/21 21:00
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