安室奈美恵は「ファットFIRE」? その真逆、「リーンFIRE」のギリギリ生活とその理由
#NHK #ねほりんぱほりん
FIREして初めて桜を美しいと感じられる社会
番組は、裕福な「ファットFIRE」の人たちにも話を聞いていた。早期退職後の生活ぶりについてである。
まずは、資産総額は2億5000万円を誇る40代のヨシヒコさん(FIRE歴5年)の登場。
「何もないときは1日じゅうゲームしてます。朝6時からゲームして、ご飯食べたり、昼寝したり、ゲームしたり、ずーっと過ごしていますね。ゲームなんて、時間のない人にとっては時間の浪費ですよね。でも、私は暇つぶしだと思っているので楽しいです。好きなときに寝て、好きなときに起きて、会いたい人に会って、家にいたいときは家にいます」(ヨシヒコさん)
どうしたって、理想はこっちだ。ただ、資産が2億5000万円あっても、独身でなければ厳しいと思うのだ。もし家庭があったら、気が抜けない。普通の感覚だと、それくらいFIREのハードルは高い。
続いての登場は、資産総額1億円で30代のリョウさん(FIRE歴3年)である。30代にして、資産1億でリタイア。正直、グレーなラインである。勇気が必要だと思う。「もし宝くじで1億当たったら、自分はアーリーリタイアするか?」と試しに筆者も妄想したが、やっぱりまだ怖い。より潤沢な資金を持っておきたい。
でも、リョウさんがポロッと口にした以下の言葉は沁みた。
「近所の名所でもなんでもないところで、1本桜が咲いてたんです。『すごい綺麗だな』と思って。それって毎年咲いてたんでしょうけど、目にも留めなかったし、楽しめなかったんですよね。僕は今、桜が綺麗に咲いているのを見て『綺麗だな』って思える人間になれた……っていう、そこの自由はすごく感じます」(リョウさん)
FIREしないと桜を美しいと感じることもできない社会は、やはり病んでいると思うのだ。
仕事に追い詰められるくらいなら、野草を食べて生きたほうがマシ
普通に考えると、若くしてリタイアはなかなかできない。不安があるし、怖さもあると思う。そもそも、カツさんとタイチさんはなぜFIREになったのだろう?
「やりたい仕事ができなくなったことがきっかけでした。30歳くらいの頃、大手企業に転職したんですけど、1年後にまったく経験のない部署へ異動になっちゃって。その仕事が合わなくて、体調を崩して半年くらい休職したんです。それがきっかけでした」(タイチさん)
「通勤のバスの中で泣きながら帰ったりとか。“炭鉱のカナリア”じゃないですけど、会社に近付いてくると胃が痛くなるみたいな感じで。働く場所や時間とか、自分の自由が効かないのがすごいストレスでした。楽しいはずのアニメすら見る気力が起きない。酸欠で苦しいみたいな感じになってたんですけど、それが今、やっと酸素が吸えたっていう感じです」(カツさん)
つまり、2人ともメンタルきっかけでFIREになっていたのだ。彼らの話を聞くかぎり、おそらく両者とも鬱の状態になっていた気がする。
社会の歯車になるのも、それは才能だ。「辞める」という選択肢があるだけで救いだし、仕事に追い詰められて自殺するくらいなら、野草を食べて暮らしたほうがマシ。でも、鬱で仕事を辞めたら、そこからは野草を食べる生活が余儀なくされる社会だという事実に幻滅する。つらい。そんな世界は、もう地獄だと思うのだ。
タイチさんは会社員時代、3000万円を貯めるまでに徹底して節約したらしい。携帯はスマホではなくガラケーに。しかもオプションを外し、最安のプランにした。自宅はガスの契約をせず、会社のシャワーを利用して体を洗った。かなり異常な節約術とも思えるが……。
「苦しかったんですけど、節約は楽しい部分もあって。自分の考えで動けるところは結構楽しくて。会社だとその逆で、基本的に上司が命じたことをやるって感じじゃないですか。それが楽しくないんですよね」(タイチさん)
節約生活はエンジョイしたほうが勝ち、か……。ただ、潤沢な資産を持てれば正しく自由を享受できるのに、彼はお金を切り詰める方向で自由さを実感していた、という事実がキツい。この格差にいたたまれなさを感じてしまうのだ。
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