『るろうに剣心 最終章 The Beginning』すさんだ“人斬り抜刀斎”を演じきる佐藤健の殺意
#金曜ロードショー #しばりやトーマス #金ロー
原作の「人誅編」と「追憶編」をワケて、逆にした監督の狙い
原作では「人誅編」の途中で剣心の過去が明かされる「追憶編」になり、その後「人誅編」が再開される。実写版では「人誅編」と「追憶編」をそれぞれ単独の一本として、さらに前後を逆にした。普通なら「追憶編」を先に公開して、「人誅編」を公開して完結するところ。
だが監督の大友啓史は「『The Beginning』で見てほしいのは、『誰が誰を斬ったか』とか『剣心の頬の十字傷は、物理的にどのようにつけられたのか』ではなく、そこに至る感情」を見て欲しいのだという。
なぜ十字傷をつけられたか、という謎解きを明かすのではなく、剣心が傷をつけられるまでに至った感情を描こうとして前後を逆にしたのだ。謎解きはすでに原作で成されている要素なので、それをなぞらずに、実写版ならではの演出をしたわけだ。
この『るろうに剣心 最終章』二部作は「実写版ならではの演出」を仕掛けていることは前回も説明したが、後編でもその思想を貫いている。
これまでのシリーズでは剣心が手にしているのは、峰と刃が逆さになっている逆刃刀。これは普通に斬っても斬れない刀だ。だから斬るというよりは叩きつけるアクションになっていた。幕末の剣心の武器は斬れば血を吹き、肉を断つ真剣だ。一太刀で致命傷を与えるので、アクションも派手さより恐ろしさの方を際立たせている。
人が平和で暮らせる新しい時代のために刀を振るいながら、やっていることは暗殺稼業ゆえに仲間からも孤立する剣心を演じた佐藤健は、前作までは「つかみどころのない飄々とした」人物像をつくっていたが、本作では徹底して感情を表にあらわさず、自分のやろうとしていることを信じきれない、けれどやるしかないという鬱屈さの中に決意を秘めた人間を演じきった。
新選組が力をつけ始め、京都にいられなくなった剣心は、高杉にあてがわれた山村の小屋で周囲に怪しまれないために、巴とは夫婦だと偽って暮らしはじめる。刀を捨て、畑を耕す二人だけの生活を続けるうちに剣心は人を斬って平和な世を作るという夢が、愚かな思い上がりであったと悟る。巴もそんな剣心を見て、これまで明かさなかった身の上話をする。江戸の御家人の娘だった巴は、同じく御家人の婚約者と祝言を挙げる予定だったが、京都見廻組に志願した婚約者は、動乱に巻き込まれ命を落とす。
幸せだった生活をすべて失ったという巴に剣心は
「新たな時代が来るまでは人を斬り続けるが、新しい時代が来たら俺は人を斬るよりも人を守る道を探そうと思う。君が失った幸せを守り抜く」
と告げ、偽りでなく巴と本当の夫婦になることを選ぶのだった。
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