深田晃司監督が映画界のハラスメント構造を解く 権威者のいる業界ほどセクハラの温床に
#映画 #インタビュー
2022年8月24日、厚生労働省にて興味深い会見が開かれた。評論家の荻上チキ氏らが調査協力した「表現の現場調査団」が、映画、演劇、美術、音楽、文芸、写真、デザイン、漫画、建築といった表現の現場で起きているハラスメント問題や不平等さに関わる「ジェンダーバランス白書2022」(https://www.hyogen-genba.com/)を発表し、表現の現場が圧倒的に男性優位な社会であることを明るみにした。
映画界からは『淵に立つ』(16)や『本気のしるし 劇場版』(20)などで知られる深田晃司監督が調査団の一員として参加し、国内の主要な19の映画祭と映画賞を過去10年間にわたって調べ、統計化している。その結果、映画賞の受賞者は、男性が約75%、女性が約25%であり、その受賞者を選ぶ審査員は男性が約74%、女性が約26%であることが分かった。かねてから言われてきた「映画業界は男性社会」であることを数字として可視化したことになる。
会見を終え、新作映画『LOVE LIFE』(9月9日より公開中)を携えてベネチア映画祭に向かう深田監督に、なぜ映画業界ではセクハラ、パワハラが多発するのか、問題構造について語ってもらった。
――「表現の現場調査団」が昨年発表した「ハラスメント白書2021」の内容に驚いて、深田監督は今回から調査団に参加されたそうですね。「ハラスメント白書」のどこに驚いたのでしょうか?
深田 「表現の現場調査団」は現代美術の方が中心になって立ち上げられた運動ですが、美術だけでなく、映画、演劇、音楽など現代芸術全般を横断的に調べている点がすごいと思ったんです。どの分野でもハラスメントは起きていますが、他の分野と比較されることで、映画業界のハラスメントのエグさを痛感しました。当事者からレイプに相当する性被害も報告されていて、もはやハラスメントではなく、性犯罪です。
――映画界ではここ数年、セクハラ問題が次々と明るみになってきています。なぜ、映画業界はこうもハラスメントが多いのでしょうか?
深田 映画や演劇は集団性が高く、小さなコミュニティーの中で活動していくため、個人で行いやすい表現よりもハラスメントが起きやすいのではないか。映画監督や舞台の演出家、映画館の支配人とかもそうですが、コミュニティーの中の小さな権力者となり、ときに暴君になってしまう。僕が劇団「青年団」の演出部に入った際に、主宰者の平田オリザが言っていたのが「とにかく劇団はカルト化しやすい。だから、そのことはすごく注意しなくてはいけない」ということ。作品づくりをする上での良い悪いのジャッジはとても曖昧で、演出家や監督の主観に依存します。そのため、それを決められる監督や演出家の言動が過剰に権威を帯びることになってしまうんです。集団の中ではヒエラルキーも生まれ、監督やプロデューサーだけではなく、技師から助手や、先輩から後輩への構造的なハラスメントも誘引されがちです。さらに映画の場合は1億~数億円と大きなお金が動き、キャスティングを握る人物にますます権力が生まれることになるんです。(1/4 P2はこちら)
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