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白鴎大学ビジネス開発研究所長・小笠原教授「勘違いの地方創生」特別編

“巨大イカ像”経済効果6億円で掌返しの称賛を浴びる能登町に聞く騒動の舞台裏

「経済効果6億円!」よりも大事な、過疎の町での新規雇用20名という数字

巨大イカ像経済効果6億円で掌返しの称賛を浴びる能登町に聞く騒動の舞台裏の画像4
観光客だけでなく子どもたちも遊べる!

――そして今年8月末、「経済効果が6億円、宣伝効果が18億円」という独自算出の数字が報じられ、再び報道が盛り上がりました。

https://www3.nhk.or.jp/lnews/kanazawa/20220830/3020012598.html

小笠原 「経済効果」という数字は結構、劇薬なんですよね。あくまで推計であるということではある程度の目安としてとらえるべきなんですが、インパクトがあるためにそれだけが独り歩きしてしまいがちです。大手メディアはそうした数字に一斉になびくのでしょうが、我々研究者が気にするのはもっと別のリアルな、生の数字の部分です。

 昨年のサイゾーの記事では「「お客さんがたくさん来ました」「地元の海産物が売れました」「地元の雇用が増えました」となれば、ポストコロナの社会でむしろ巨大イカは成功事例になる」とお話しました。特に重要なのは雇用で、いま地方の話をするときに肝になるのはここなんです。実際、そのあたりのリアルな数字はどうなんでしょう?

灰谷 「イカの駅」では現在、パートさんや短期雇用の方も含めて今は20名くらいが働いています。2020年のオープン前には0だったわけですから、増えています。ただ、イカキングだけに結びつけるとなると、もう少し精査しないといけないかなと思います。

小笠原 なるほど。これっていわば二段式ロケットみたいなもので、イカキングはその1段なんですよね。どこからどこまでがイカキングの成果かという話になりがちですが、本当はロケット全体の話をしないといけない。ブースターエンジンひとつだけの評価をしてもあまり意味がないんです。全体で20人の雇用が生まれたというのは、実に立派な”効果”ですよ。

綱屋 いまおっしゃっていただいたように、我々も当初は雇用や売上といった数字を拾い集めて、それを「経済効果」としたいと考えていました。ですが、コンサルティングをお願いした方とやり取りする中で、そのためにいろんな関係業種の方に聞き込み調査を重ねて数字を出しても「イカキングが直接の原因である」という因果関係を証明するのは、非常に難しい、と指摘がありました。そうして出した数字は恣意的なものになってしまうかもしれないので、それよりは公平さを担保できる県の産業連関表を使いましょう、と指導いただいた経緯があります。

小笠原 本来は、こうした数字がある種恣意的なものになることは致し方ないことなんです。大切なのは、イカキングを含めた取り組みで町民のみなさんが仕事を得たり、豊かになったかどうか。生の数字がどれくらい変わったのかは非常に重要ですから、今おっしゃったような雇用の数字や、つくモール関連の売上の数字などはぜひ胸を張って議会にご報告いただいて良いものだと思います。メディアにももっと発表していってもいいかもしれません。

 ちなみに、炎上の最大のポイントになっていた交付金の使途としての適切だったかどうかなのですが、国からは何か言われたり、その他反応はあったんでしょうか?

綱屋 もちろん国の会計検査等は受けており、特に指摘等はありませんでした。むしろ、地方創生の事例として内閣府のホームページに掲載されているくらいなので、問題はないのだろうと考えています。

小笠原 そうでしょうね。先程も申し上げた通り、地方創生の専門家として見ても会計上の問題が出る案件ではない。もちろん全国的に見たら問題がある自治体もあるのかもしれませんが、少なくとも能登町のみなさんがやっていることは何一つ問題がありませんでした。多くの批判に負けずにここまでやってこられたことは、素晴らしいと思います。今後のさらなる奮闘を期待しております。

――今回はありがとうございました。今度はぜひ、現地取材でお邪魔させてください!

(写真提供=能登町)

 

 

斎藤岬(ライター)

1986年、神奈川県生まれ。編集者、ライター。

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さいとうみさき

最終更新:2023/02/08 19:57
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