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日刊サイゾー トップ  > 能登町に聞く騒動の舞台裏
白鴎大学ビジネス開発研究所長・小笠原教授「勘違いの地方創生」特別編

“巨大イカ像”経済効果6億円で掌返しの称賛を浴びる能登町に聞く騒動の舞台裏

地道な活動が理解されぬまま…あらぬ方向で取り上げられ炎上

灰谷 2020年7月に議会を通過したときにはローカルニュースになったくらいで、特に大きく取り上げられてはいませんでした。その後12月に北陸中日新聞さんで「イメージ図が完成」と記事が出た後、年末近くになって朝日新聞さんで「お金の出所がイカがわしい?」という見出しで取り上げられます(2020年12月24日掲載)。それがyahooのトップニュースにも掲載されて一気に広がっていきました。年が明けてからTBSさんの『グッとラック!』で放送されて、ワイドショーで取り扱われる流れになりました。

https://www.chunichi.co.jp/article/170422
https://www.asahi.com/articles/ASNDS3ST8NDHPISC00L.html

小笠原 実際、「イカがなものか」というご意見は町役場に届いたんでしょうか。

灰谷 はい。全国メディアで取り上げられたことで、年末年始をまたいで届いていました。ほぼ町外、県外からですが、電話もかなりありました。それと、私は普段、イカをかぶって名前を出して活動してるんです(笑)。だから自分のSNSにもかなりメッセージは飛んできました。

https://srdk.rakuten.jp/entry/2021/08/27/103000

小笠原 なぜあれほど注目されたのか、今振り返ってみるとどうお考えですか?

灰谷 国会で地方創生臨時交付金が採決された2020年6月は、感染拡大の第1波が落ち着いて全国で、緊急事態宣言が解除された時期でした。「まだまだ怖いけどだいぶ、収まってきたんじゃないか」という状況だったのが、そこからまた年末に向けて感染者数が増加し、フェーズが変わってきます。イカキングの詳細を公開したのはちょうど、この時期に当たっていました。先行きのわからないコロナ禍への怖さが再び増大していたこともあって、「目的と違うことにお金を使っている」という批判が出てきたのだと思います。

 我々としては、それまで積み重ねてきたものの上に成り立つプロモーションという位置づけで、キャッチーなものをつくろうと大きなモニュメント制作に取り組みました。ですが、その背景はまったく理解されず、「なんであんなものをつくるんだ」となった。そこにはおそらく、地方自治体がハードをつくることへの批判的な文脈もあったのではないかと思います。

小笠原 せっかくの機会なので聞きますが、ちなみに、サイゾーの記事が出てから町内での受け止められ方は変わったりしましたか?

能登町ふるさと振興課 地域戦略推進室・綱屋栄次郎さん(以下、綱屋) 町内ではもともと批判も肯定もほとんど上がっていなかったので、特段大きく変わりはなかったです。もちろん役場内ではいろんな記事をチェックしているので、当時サイゾーさんだけが公平な目線で書いていただていて「ありがたいね」と読んでいました。ただ、その中で小笠原先生が「今のこの騒ぎは本質ではない、問題はこれでお客が呼べて経済が回復するかどうかだ」とおっしゃっているのを見て「なんて恐ろしいことを言われるんだおっしゃる通りだが、すごいプレッシャーを感じる」と思っていました(苦笑)。

小笠原 でも本当に、この話の肝はそこなんです。大きなイカを置いて地方創生につながる結果が出たのかどうかが問われなければいけない。ですが、それよりもはるか手前の「コロナ禍でこんな事業をやって」と批判されているということはつまり、地方創生というものの本質的な部分が世の中から理解されていないんですよね。私としては「これはまずいぞ」と。ですからある意味では、能登のみなさんが身をもって世の中の課題を切り開いてくださったんだなと考えています。

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