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稲田豊史の「さよならシネマ 〜この映画のココだけ言いたい〜」

『もっと超越した所へ。』反ジェンダーフリーなどんでん返しと主題歌がaikoの意味

聞き分けのいいオンナノコ

 映画本編の出した結論が、びっくりするほど反ジェンダーフリーである(ように見える)こと。その映画の主題歌が、前時代的なオンナノコ性のニーズを満たし続けるaikoであること。ここに逆張り的な批評性の香りを察知するのは、穿(うが)ちすぎだろうか。

 果たして彼女たち4人は、心の底から自由意志で「マリア様」になろうとしたのだろうか? マリア様になることが、あるいは「聞き分けのいいオンナノコ」としてふるまうことが、この日本社会では、総合的には結局もっとも苦痛を味わわないで済むのだと理解したうえで、ただ受け入れただけなのでは?

 社会を変革するより自分の意識を変革したほうが、つまり「超越した所」に身を置くほうが、よっぽどカロリーを使わない、よっぽど現実的な解決策であると、彼女たちは気づいたのだろうか。

 ラストシーンは解釈に迷う。これはハッピーエンドなのか、「ハッピーエンド然」としているだけなのか。

 ものすごいものを投げかけられた気分だ。考えることがあまりに多い。

稲田豊史(編集者・ライター)

編集者/ライター。キネマ旬報社を経てフリー。『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形』(光文社新書)が大ヒット。他の著書に『ポテトチップスと日本人 人生に寄り添う国民食の誕生』(朝日新書)、『オトメゴコロスタディーズ フィクションから学ぶ現代女子事情』(サイゾー)、『「こち亀」社会論 超一級の文化史料を読み解く』(イースト・プレス)、『ぼくたちの離婚』(角川新書)などがある。

いなだとよし

最終更新:2022/10/26 12:59
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