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未曾有の物価高騰が生活を圧迫のデータ… 生活保護申請数、3カ月連続増加

未曾有の物価高騰が生活を圧迫… 生活保護申請数、3カ月連続増加の画像1

 厚生労働省が10月5日に発表した7月の生活保護受給者数によると、保護申請件数は2万2016件と前年同月比1259件(6.1%)も増加し、3化月連続の増加となった。生活保護受給者の状況をつぶさに見ると、物価上昇による影響が朧気ながら浮かび上がってくる。
 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/hihogosya/m2022/07.html

 生活保護申請件数は新型コロナウイルスの感染拡大による雇用情勢の悪化を受け、21年中は4月を除いて前年同月比で増加が続いた。だが、22年に入ると、多くの業種の経済活動が回復してきていることから、前年同期比での減少が続いていた。ところが、5月にはぜ年同月比で10.6%という大幅増加となり、その後、7月まで3カ月連続で増加が続いている。(表1)

未曾有の物価高騰が生活を圧迫… 生活保護申請数、3カ月連続増加の画像2

 7月の保護開始世帯数は1万8489世帯で前年同月比1288世帯(7.5%)増と申請件数を上回る増加率となった。新型コロナの影響による雇用情勢の悪化を受け、保護基準が緩和されたことで、21年は4、5、10月を除くすべての月が前年同月比で増加したが、申請件数の動きを反映し、22年に入ると1~4月は前年同月比で減少を辿っていた。しかし、5月からは増加に転じ、3カ月連続での増加となっている。(表2)

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 生活保護の世帯類型には、高齢者世帯と高齢化世帯以外の母子世帯、障害者・傷病者世帯、その他世帯の4類型がある。7月の受給状況は高齢者世帯が91万730世帯で全体の55.7%を占めており、次いで、障害者・傷病者世帯の40万4857世帯で24.8%、その他世帯の25万1395世帯で15.4%、母子世帯の6万7399世帯で4.1%となっている。

 文字通り、高齢者世帯、母子世帯、障害者・傷病者世帯というのは属性を示しているのだが、その他世帯というのはこれらに属さない、極めて普通の世帯に近いものとなる。換言すれば、その他世帯とはまさに普通の家庭が生活保護を受けざるを得なくなったものだ。

 これまでの生活保護受給世帯の傾向は、高齢者世帯が一定水準で常に増加を続け、障害者・傷病者世帯は微増か、横ばい状態、母子世帯は減少傾向だった。高齢者世帯の増加は、年金(特に国民年金のみ)の受給では、老後に安定した生活が送れないという“高齢者の貧困問題”に密接に関係している。一方、母子世帯の減少は女性の社会進出、女性の地位向上などにより、シングルマザーがある程度は安定した仕事に就けるようになったことが一因となっている。

 問題はその他世帯で、新型コロナの感染拡大による雇用情勢の悪化から受給世帯が増加を続けている。21年は年間を通じて増加し、1月の24万6860世帯から12月には25万1000世帯と4140世帯(1.7%)も増加した。増加傾向は22年に入っても続いており、7月には25万1395世帯となっている。

 ただ、前年同月比で見ると、21年には前年同期比で1.5~2.7%で増加していたのが、22年4月には0.7%まで増加率が低下した。ところが、5月からは再び増加率が上昇し始め、7月には1.3%となっている。(表3)

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 申請件数、保護開始世帯数、そしてその他世帯の受給が増加に転じたのは、いずれも5月からとなっている。では、なぜ5月から増加に転じているのか。それは、新型コロナの影響に加え、新たに物価上昇の影響を受けている可能性が高いと類推される。物価の代表的な指標である消費者物価指数の生鮮食品を除く総合指数が、前年同月比で0.8%増から2.1%増に“跳ね上がった”のが22年4月なのだ。

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 物価高が生活保護にまで波及している可能性があり、政府は物価高対策とともに、生活困窮者対策を実施していく必要がある。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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Twitter:@tohrusuzuki

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最終更新:2022/10/21 07:00
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