トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > ビスケットブラザーズ過去最高得点!
恒例・元芸人が渾身の全ネタ分析!

ビスケットブラザーズ、 生理的に無理でも強制的に笑わせる暴れぶり!全ネタレビュー

最後10番手は即席ユニット初の決勝進出者『最高の人間』

 クズ芸人として圧倒的な存在を放つ岡野陽一さんと、「女芸人№1決定戦 THE W」4代目女王に輝いた吉住さんによる即席ユニット。2人とも「R-1グランプリ」ファイナリストの経歴を持ち、岡野さんに関しはコンビで2度もキングオブコントの決勝へ進出している。

 お二人のピンネタには共通点がある。吉住さんが「THE W」で披露した芸能人の不倫を絶対に許さない女性のネタや、岡野さんが「R-1グランプリ2019」で披露した鶏肉を風船に括りつけて飛ばそうとしたおじさんのネタを見る限り、間違いなくネタの根底にあるのは「人間の狂気」だ。これほど相性が良い2人が手を組んだのだ。いやがうえにも期待が高まる。

 地方のテーマパーク”岐阜ワンダーランド”の新人研修。楽しいテーマパークの本当の姿は狂気に満ち溢れたいかれた世界だったというネタでやはり得意分野の狂気を描いた作品だ。

 ネタのクオリティは相当高く、長年組んでいるコンビにも引けを取らないものに仕上がっていた。軽く分析すると前半は過剰なファンタジー、後半は狂気じみた世界観という全く違うネタの質で笑いを起こし、良い意味でお客さんを裏切った。さらに「ニッポンの社長」が使用していた暗転を使ってオムニバスの笑いを起こすというシステムも、エンターテイメントとしてお客さんに先読みさせない程度に入っていた。2人のキャラクターも上手く使ってあり、最初から最後まで集中してみることが出来る素晴らしいネタだったと思う。

 ただスタート時の岡野さんの緊張感が見ている側に多少伝わってしまった事と、ストーリー構成が上手すぎて、後半になるにつれて見入ってしまい、直接的な笑い声に繋がらなかったところが今回の敗因だったのではないだろうか。

 それを差し引いても十分見る価値がある、素晴らしいネタだったことには間違いない。面白かった。

 今大会は圧倒的なパワーで抑え込んだ「ビスケットブラザーズ」の優勝となった。

 僕が芸人をしていた時代は、ビスケットブラザーズさんのようなパワー型の芸人が大勢いた。多少セリフが荒くても、芝居が下手でもとりあえず勢いで突き進む。そんな芸人たちで溢れていたのだが、時代が進むにつれてネタの繊細さや演技力、トータル的なクオリティ重視になり、パワー型の芸人は少なくなっていった。

 しかしビスケットブラザーズさんの優勝で証明された、かつて反映していたパワー型芸人は間違っていなかったということを。

 お笑いは質もさることながら意味不明でもなんでも良いからボケを詰め込み笑わせ続けた方が勝つ。これはビスケットブラザーズさんの質が悪いと言ってるのではなく、決勝へ進むぐらいの芸人になるとある一定の水準は間違いなくクリアしており、僅差で優勝をもぎ取るのはパワーなのだ。

 もしネタのクオリティだけで優勝を決めるなら「かが屋」と「最高の人間」がトップ争いをしていたのではないだろうか。

 しかし人を強制的に笑わせたい場合は頭で考えさせるのではなく、本能に訴えかけるべきなのだ。

 ひとつ勘違いしないでほしいのは、決して時代が逆行しているわけではない。「キングオブコント2022」は間違いなく今までの大会に比べてレベルが高く、間違いなく芸人は進化している。

 ストレス社会で無気力になる人が多い現代。テレビを見ていてもただ目に映っているだけ、ただ静かなのが嫌だからつけているだけという人も少なくないだろう。テレビすら意味もなく無気力に見てしまう時代に、強制的に笑わせる芸人が登場したのは必然なのかもしれない。

 あなたの気力を回復する為、ストレスを軽減させる為に今日も芸人は笑わせ続ける。

 

 

檜山 豊(元お笑いコンビ・ホームチーム)

1996年お笑いコンビ「ホーム・チーム」を結成。NHK『爆笑オンエアバトル』には、ゴールドバトラーに認定された。 また、役者として『人にやさしく』(フジテレビ系)や映画『雨あがる』などに出演。2010年にコンビを解散しその後、 演劇集団「チームギンクラ」を結成。現在は舞台の脚本や番組の企画などのほか、お笑い芸人のネタ見せなども行っている。 また、企業向けセミナーで講師なども務めている。

Twitter:@@hiyama_yutaka

【劇団チーム・ギンクラ】

ひやまゆたか

最終更新:2022/10/14 20:00
123456789
ページ上部へ戻る

配給映画