ビスケットブラザーズ、 生理的に無理でも強制的に笑わせる暴れぶり!全ネタレビュー
#檜山豊 #KOC2022を語ろう
3番手は3年ぶりの決勝進出となった『かが屋』
僕が思うかが屋さんはシュールでリアルなコントをするコンビというイメージで、どことなくコントに哲学的なものすら感じる時があった。さらにリアルな状況を切り取ってネタにするので、時には笑いが起きなくても成立しているようなコントさえあったイメージだ。なのでボケとツッコミがあるようなベタなネタが好きな人には理解しがたいのではないかという印象があったのだが、今回のネタでそういったイメージは全て消し去った。
ネタは女性の上司と男性の部下がバーで飲んでいるという設定。スタートから上司の口調はおかしく「どんくさい」や「グズ」などの罵声を部下に浴びせる。そんな暴言に対して違和感を抱えながらネタは進んでいき、上司が舞台下手にあるトイレに入った瞬間に違和感の謎が解明された。
トイレに入った上司が友達に電話をする。泣きそうになりながら上司は友達にこう言った。
「もしもしかおり? 加賀君ってほんとにドM?」
部下に好意を持っている上司がドMの部下の為に頑張ってSを演じていたのだ。このセリフを聞いた瞬間にこの上司のキャラクターは、すべてのお客さんに愛される。間違いなく応援されるキャラとなる。あまり知られていないが、キャラクターが愛されるというのはとても大事なことで、キャラクターがお客さんに好かれると、ちょっとしたことで笑いが起こるのでネタ自体が盛り上がり演者もやりやすくなるのだ。
ただ舞台上には2人いる。ここで部下を上司と対立させてしまうと、部下のキャラクターで笑いを取るのは難しくなる。つまりここからがコント師の腕の見せ所。
Sっ気を出されることに対して嫌そうな顔をしている部下。そんな部下もトイレへいき、上司の友達に連絡をする。いつもと違う上司に困惑している部下。そしてこういった。
「周りから見るとパワハラに見えかねないかなって心配で。あ、僕はドMなんで全然大丈夫です」
……見事だ。このセリフで両キャラを好かれさせることに成功した。
フレーズで笑いを起こし、キャラクターを好かれさえ、謎が解明してフレーズの意味合いが変わりさらに笑いを起こす。これほど完璧に近いネタはそうそう見られるものでは無い。
ひとつ惜しいところがあるとすれば、ネタの全貌が解明されてからはもう少しパワープレイがあっても良かった。無理やりSを演じているのだから、多少マニアックな事ややり過ぎなセリフがあっても確実に笑いになる。かが屋のスマートさが後半、ネタにブレーキをかけてしまったのかもしれない。必要に応じてもうすこし下品な笑いが起こせるようになれば、さらに引き出しが増えてチャンピオンいなる日もそう遠くはないはずだ。
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