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北海道で“熊害”深刻…64頭の乳牛を襲ったヒグマ、コードネーム「OSO18」ほか産業にも打撃

北海道で熊害深刻…64頭の乳牛を襲ったヒグマ、コードネーム「OSO18」ほか産業にも打撃の画像1
イメージ画像(GettyImagesより)

 近年、日本のいくつか県では熊による被害や捕獲数が増加傾向にある。北の大地・北海道は、“熊害”の被害が最も深刻な地域のひとつだ。

 北海道における近年の代表的な熊害としては、巨大ヒグマによる家畜襲撃がある。

 64頭の乳牛を襲ったコードネーム「OSO18」と呼ばれるヒグマの存在は、全国でも広く知られ始めている。2019年以降、巨大ヒグマによって乳牛が襲われる事態が毎年続いており、飼料用トウモロコシを荒らされるなど農業被害も頻発中だ。しかも家畜を襲うヒグマは用心深い。猟友会などによる数年に渡る必死の捕獲作戦も虚しく、解決のメドは立っていない。地域の酪農家にとって、熊害は年を追うごとにますます深刻な死活問題となっている。

 熊害の影響は酪農や農業だけにとどまらない。例えば、交通インフラにも甚大な被害を及ぼしている。2021年には、列車とヒグマが衝突、もしくは衝突を回避するため徐行を余儀なくされた回数が、過去最多68件にのぼったことがJR北海道の発表で明らかになっている。今年8月28日と31日には、衝突したヒグマの死体除去のために3時間以上もの遅延が相次いで発生した。

 観光業も熊害の影響が目立つ分野だ。世界自然遺産に登録され、海外からの観光客も多い知床からは、クマが乗用車に突進したり、しがみついて車体を揺らすなどの被害が立て続けに報告されている。また札幌近郊でもクマ出没に対する警戒感から、サービスを縮小する事業者がいる。日本有数の水質を誇る支笏湖と千歳川近辺で、ラフティングなどアウトドア・アクティビティサービスを提供している事業者スタッフのひとりは言う。

「支笏湖や千歳川近郊は札幌から近く自然環境に恵まれていて、以前まではキャニオニングなど沢下りのアクティビティも楽しむことができました。しかし、熊の目撃情報が相次いだため、安全を最優先しサービスを中止することに……。仕方がないこととは言え、残念でなりません」

 なお、近年では道内都市部にあたる札幌市内でも、クマの目撃情報が絶えない。札幌市が公開しているヒグマ出没情報には、数日おきに目撃情報が更新されている。昨年には北海道のローカルTVで、市内を疾走するクマが人を背後から攻撃して逃げていくショッキングな映像も報じられた。目撃情報が寄せられると、万が一の危険を避けるため、学校が始業時間を遅らせたり、臨時休校するという事態もしばしばおきている。今後もクマ出没が増加するとなれば、教育をはじめ日々の生活への影響も本気で危ぶまれる状況だ。

 札幌在住で北海道各地に、技師として出張することが多いAさんは話す。

「長距離移動していると、人気のない山あいの道でクマに並走されることもしばしば。近郊の役場に目撃情報を伝えることも増えましたね。あと、クマ同様に個体数が増えている鹿も意外に危険なんですよ。知り合いが運転中に飛び出して来た鹿に衝突して、頑丈なはずのボルボが廃車になりました。一方で鹿はピンピンしていたそう。ぶつかったのがメスだったから良かったのですが、体重が重い雄だったらドライバーは死んでいたかもしれません」

 深刻化するクマ被害にどう対応していくか。現在、農作物などについては鳥獣による被害額が計上されている状況だが、直接的な人身被害や各産業への被害などを含めて全体像を改めて可視化していくことがまず求められそうだ。

河 鐘基(ジャーナリスト)

リサーチャー&記者として、中国やアジア各国の大学教育・就職事情などをメディアで発信。中国有名大学と日本の大学間の新しい留学制度の設置などに業務として取り組む。「ロボティア」「BeautyTech.jp」「Forbes JAPAN」など、多数のメディアで執筆中。著書に「ドローンの衝撃 」(扶桑社新書) 「AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則」 (扶桑社新書)、共著に「ヤバいLINE 日本人が知らない不都合な真実」 (光文社新書)など。

Twitter:@Roboteer_Tokyo

はじょんぎ

最終更新:2023/01/26 18:59
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