アントニオ猪木「猪木といえば●●」という記号を日本一持ってるプロレスラー
#プロレス #放送作家 #深田憲作 #アレのどこが面白いの?~企画倉庫管理人のエンタメ自由研究~
放送作家の深田憲作です。
「企画倉庫」というサイトを運営している私が「あの企画はどこが面白いのか?」を分析し、「面白さの正体」を突き止めるための勉強の場としてこの連載をやらせてもらっています。
今回のテーマは「アントニオ猪木さんのキャラクターについて」です。
先日、アントニオ猪木さんがお亡くなりになられました。猪木さんは日本の歴史において「最も有名なプロレスラー」と言っても過言ではない人物。プロレス好きでなくとも、そのスター性は誰もが認めるところでしょう。
私はプロレス好きだった父親の影響で、小学生の頃に猪木さんのファンになり、レンタルビデオ屋に通い詰めて猪木さんの試合を見漁っていました。子どもながらに、見る者を熱狂させるそのカリスマ性に心酔していた記憶が残っています。
では、アントニオ猪木のどこが凄かったのか? この機会に改めて考えてみました。
私が思ったのは、猪木さんは「“といえば”の宝庫」であるということ。どういうことかというと、国民的に認知される人物・キャラクターや作品には、必ずと言っていいほど、ビジュアルや言動に「記号」と呼べるようなものがあります。芸能人を例にすると『世界の果てまでイッテQ』(日本テレビ系)に出演するイモトアヤコさんは太い眉毛とセーラー服が記号化されていて、国民全体に「イモトといえば太眉」「イモトといえばセーラー服」といったイメージが定着しています。
アントニオ猪木さんはこの「猪木といえば●●」を数多く持っている稀有な存在でした。
例えば、「猪木といえば“ビンタ”」。イベントなどで猪木さんが登場した時には、関係者をビンタするのがお約束になっていました。本来、敵への攻撃として使われるビンタが「猪木にビンタされるのは嬉しいこと」という、むしろありがたいものとして定着していました。
同じくイベントで恒例になっていたものだと「猪木といえば“1!2!3!ダー!”」。プロレスの試合後やイベントの締めで行われていました。
日本の行事では伝統的に、三三七拍子や一本締めで会を締める習慣がありますが、そのオリジナル版を持っている人間はそうそういません。イベント主催者の立場になって考えると、会を盛り上げる催しや締めをどうするかに頭を悩ませると思うのですが、猪木さんがいれば心配ありません。そもそも、アントニオ猪木という存在がイベントになってしまうわけです。
ビジュアルの部分でいうと「猪木といえば“アゴ”」。アゴが出ていることは、一般的にはネガティブなイメージがありますが、猪木さんの場合はそれがポジティブな意味で記号化されていたように思います。猪木さんのモノマネを振られたら、誰もがアゴをしゃくれさせてしゃべるはずです。モノマネされやすいというのもスターの条件の1つだと思います。
猪木さんは音でも記号を持っていました。「猪木といえば“イノキボンバイエ”」です。あの音楽が鳴れば日本人の誰もが「猪木が出てくる!」と分かります。国民全体が知っているレベルで音楽が、記号化されている有名人もそうそういないでしょう。
他には「猪木といえば“燃える闘魂”」「猪木といえば“赤いタオル”」「猪木といえば“元気があればなんでもできる”」「猪木といえば“コブラツイスト”」など、多くの記号を生み出し、定着させてきました。まさにスーパースターだと思います。
亡くなる前は約2年にわたって闘病生活を過ごされていましたが、最後までアントニオ猪木としての強さを感じさせてくれました。たくさんの熱狂と勇気をありがとうございました。お悔やみ申し上げます。
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