新作『裸のムラ』は日本社会の縮図 五百旗頭監督が地方にこだわる理由
#映画 #インタビュー
2016年、富山市議たちの不正受給を地元・チューリップテレビの報道部が追及し、14人もの市議たちがドミノ式に次々と辞職、富山市議会は大混乱に陥った。笑うに笑えないこの事件の顛末は、チューリップテレビ制作のドキュメンタリー映画『はりぼて』(20年)で描かれ、異例のロングランヒットを記録した(現在はAmazonプライム・ビデオなどで視聴可能)。
日本における民主政治の中身がいかに空っぽであるかを暴いた『はりぼて』で、一躍注目を集めたのが、元チューリップテレビのニュースキャスター・五百旗頭幸男(いおきべ・ゆきお)氏だ。現在は石川テレビに転職し、新たにドキュメンタリー映画『裸のムラ』を監督として完成させている。前作『はりぼて』と同様に地方政治のおかしさを抽出しながら、地方で暮らす市民たちの意識も映し出したものとなっている。上京した五百旗頭氏に、ローカル局にこだわる理由と新作の企画意図を語ってもらった。
――チューリップテレビ時代の同僚・砂沢智史氏と共同監督した『はりぼて』は、大変な話題を呼びました。『はりぼて』の反響をどう感じていますか?
五百旗頭 劇場公開の4年前に放送したドキュメンタリー番組はいろんな賞をいただき、そのことで富山市議の問題は全国に知れ渡ることになりました。そうした地方政治に関心のある層には劇場版も観てもらえるだろうとは思っていたんですが、実際に公開が始まると、ミニシアターに初めて来たという高校生や大学生たちが多く、しかもリピーターになって作品を支えてくれたんです。若い世代に興味を持ってもらえるようにコメディタッチにしていたんですが、僕が予想していた以上に若い人たちから支持されたように思います。いい意味で、僕の予想は裏切られました(笑)。
――市議たちの不正を告発した『はりぼて』ですが、映画の終わりには砂沢記者が報道部を離れ、五百旗頭キャスターもチューリップテレビを辞めることに。予想外の結末は、多くの観客に戸惑いも与えました。
五百旗頭 『はりぼて』をご覧になった方は、ラストシーンがすごく引っ掛かったようですね。『はりぼて』の劇場公開が決まった時点で、すでに僕はチューリップテレビを退職することを決めており、一方で会社に残る仲間たちもいるという状況だったため、ああいう描き方しかできませんでした。それまでずっとガチンコでカメラを回していたのに、僕が上司を呼び出すシーンからは意図的に演出しています。それもあって、戸惑った観客の方もいると思います。あの時点で表現できる精一杯のものだったのですが、同時に組織ジャーナリズムの限界も見せてしまっています。(1/7 P2はこちら)
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