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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 地方政治のおかしさあぶりだす『裸のムラ』
五百旗頭幸男監督インタビュー

新作『裸のムラ』は日本社会の縮図 五百旗頭監督が地方にこだわる理由

まるで学級崩壊のような石川県議会

新作『裸のムラ』は日本社会の縮図 五百旗頭監督が地方にこだわる理由の画像3
石川県政の保守性の強さを映し出した『裸のムラ』

――石川テレビに移籍して制作したのが、ドキュメンタリー番組『裸のムラ』と『日本国男村』。7期28年にわたる谷本正憲前知事による石川県政、金沢市内で暮らすムスリム一家、土地に縛られずに自由に生きるバンライファーという、3つの異なる要素が劇場版『裸のムラ』では描かれていく。

五百旗頭 石川テレビに入社し、2日目から取材に出ました。まず取材に向かったのはコロナの第一波で揺れる石川県庁でした。チューリップテレビ時代には富山市議会だけでなく富山県議会も取材していました。富山県庁もおかしかったけれど、石川県庁はそれ以上におかしかった。谷本知事に対する職員やマスメディアの忖度ぶりがすごかったんです。

 石川県が独自にコロナに対する緊急事態宣言を出す際、谷本知事は台本に書かれたとおりの台詞を記者会見で読み上げ、県幹部を集めた対策本部でも同様の文面を読み、その後から記者たちの囲み取材に応じたんです。最初から囲み取材でいいじゃないかと。無駄な形式だらけなのに、誰も文句を口にしない。

 富山市議会も富山県議会も寝ている人はいました。石川県議会は寝ている人がいるだけでなく、後ろに座っているベテラン県議たちが横や後ろを向いてしゃべっている様子は、まるで学級崩壊しているようでした。カメラマンに「おかしいから撮ってください」と頼むと、「いや、いつもこんなものだから、おかしくないよ」とカメラマンは言うわけです(苦笑)。これは相当におかしいぞと、まずは県政をウォッチしようと決めました。

――ムスリム一家とバンライファーも、映画の中盤から谷本知事と接点を持つことに。

五百旗頭 ムスリム一家は当時の報道部のデスクからの提案でした。「コロナ禍で困っていることがあるに違いない」と僕も思い、イスラム教信者である松井誠志さん家族を取材したところ、「何も困っていません。コロナのおかげで、自分たちに世間の関心が向いていない。逆にコロナが収束したら、再び攻撃されるのではないか。そのことが怖い」という予想外の答えが返ってきたので、これは面白いと取材を続けることにしたんです。松井さんの妻・ヒクマさんの言葉は、日本社会の問題点をえぐり出すものばかりでした。

 バンライファーの中川生馬さんは、「こんなにも自由に生きている人がいたのか」と驚いて取材を始めたのですが、取材を続けていくうちに娘の結生ちゃんがカメラに見せる表情が次第に変わってきたことに気づき、やはり長期取材になりました。最初からこの3つの要素が結びつくかどうかは分かりませんでしたが、そこは長年取材してきた勘ですね。最初から分かっていないほうが、発見があって面白いんです。

 もうひとつ、ドキュメンタリーを構成する上で重要なのは、対比です。対比させることで矛盾が見えてくるわけです。ムラ社会の象徴として、まず県政を描きました。そして、ムラ社会から弾き出されているのがムスリム一家です。また、県政が男性社会であるのに対し、松井さん一家は妻のヒクマさんの存在が大きい女性社会なんです。一見、とても自由そうに見えるバンライファー家族も、娘の結生ちゃんにとってはムラ社会です。いろんな対比を作ることで、ムラ社会の問題点が浮き彫りになるよう構成しました。(3/7 P4はこちら

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