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バカ殿や変なおじさんじゃない「素の志村けん」に沈黙、爆笑、驚嘆するものまねの現在地

バカ殿や変なおじさんじゃない「素の志村けん」に沈黙、爆笑、驚嘆するものまねの現在地の画像1
レッツゴーよしまさtwitter(@yoshimasa0517)より

 テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(9月18~24日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。

森泉のものまね(ラパルフェ・都留)「ぜんぜん面白くなぁ~い」

 いまテレビのなかで芸人が表現する“悪意”のほとんどは、この時間に集約していたのではないか。そんな錯覚すらしてしまった。19日の『お笑いオムニバスGP』(フジテレビ系)。そのなかで放送されていた「2億4千万のものまねメドレー」のことだ。

 もともと『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)の名物企画だったこのものまねメドレー。郷ひろみの『2億4千万の瞳』にあわせて芸人がメドレー形式でものまねを披露していく大会だ。番組の顔はもちろん石橋貴明(とんねるず)。今回は、原口あきまさ、神奈月、山本高広、ホリといったものまねを本業とする芸人たちに加え、せいや(霜降り明星)や都留拓哉(ラパルフェ)、椿鬼奴、レイザーラモンRGといった面々が登場した。

 で、そこで披露されるものまねの“悪意”といったら。

 もともと面白いものまねには“悪意”がつきものだけれど、最近はそのあたりへの逆風もあるようで、ものまねからデフォルメがなくなってしまうことにとどまらず、そもそもものまねができなくなってしまうことを危惧する声も、ものまね芸人から聞かれたりする。

 そんななかにあって、この2億4千万のものまねメドレー。見る側に立ち止まって考える隙を与えず次々とものまねする形式もあってか、今回の放送も“悪意”が満載だった(もちろんそればかりではなかったけれど)。

 特に、阿部寛のものまねでおなじみのラパルフェ・都留による、森泉のまねはすごい。『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ系)などでも披露されているこのものまね。森と都留、もともとの顔の造形が近いというのもあるのだろうけれど、誇張したアゴや大きく見開いた目、奔放な物言いは、デフォルメを集めた感じ。それでいて似ているからすごい。

 いや、もはや似ているのかどうかもよくわからない。森のものまねがウケた都留は、平場でも随所で石橋らにマネを振られていて、そのたびに「みんなが言いにくいことをはっきり言ってしまう」みたいなことをしていた。たとえば、霜降り・せいやのシーン。石橋と相性が悪いという前フリで出てきたこともあり、せいやのものまねはイマイチな感じで出演者に受け止められていたのだけれど、そこで石橋に振られた都留は森のマネで「ぜんぜん面白くなぁ~い」と言い放った。

 その直前に石橋がせいやのマネを「あんま面白くなかったね」と評していたのだけれど、「あんま」から「ぜんぜん」へ、都留は森の物言いを借りて酷評をさらに一歩先に進める。もはや森本人から離れて、みんなが言いにくいことをはっきり言ってしまう自律的なシステムとして作動しているかのようだ。私たちも周囲に過剰に忖度しそうなときは思い出そう。心にひとつ森システム。

 いずれにせよ、本人が主なのか、ものまねが主なのか。コロッケと美川憲一の関係のように、もはや都留のものまねのフィルターを通さずに森泉を見ることは難しい。

 あと、椿鬼奴とレイザーラモンRGのデュエットは、もはやものまねを超越しているようにも思える。井上順と芳村真理、クリスタルキング、布袋寅泰と今井美樹、鈴木雅之と菊池桃子、宮本浩次と椎名林檎といった面々をマネする2人は、似てるか似てないかといえば似てない寄りなのではないかと思うのだけれど、そのあたりの似てなさは見る側の脳内で補完してくださいとばかりに強引に押し通っていく。その強引さと「わかった似てる似てる」と言いたくなる感じがおかしい。

 必ずしも似てないものまねを“ものまね”として受け止める。そんな共犯関係に入るのが楽しいタイプの“ものまね芸”。この特殊な芸のトップオブトップは、椿鬼奴とRGである。いや、トップオブトップといっても、他に追随者もいないわけだが。独立峰にして頂点である。

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