【Fラン大学ランキングやる意味ある?】少子化ですでに形骸化した言葉がはらむその先の問題
#教育 #大学 #大学入試
大学入試の実情にそぐわないFラン大学という言葉
近年、大学入試はとても多様化している。ほとんどの私立大学は近年、総合型選抜など一般選抜以外の方法で約6割の学生を取る流れに変化しており、国立大学でさえも3割ほどを一般選抜以外で取る数値目標を掲げ始めているという。2016年度からは東京大学や京都大学でも推薦入試やAO入試が開始され、世間を驚かせた。
対して現在、学生はひとりあたり4~5校ほど願書を出すことが多いそうだが、推薦や総合型選抜などで入学が決まると、予定していた一般選抜を受けなくなる。結果、受験者がひとり減るごとに一般選抜の競争率はぐっと下がり、偏差値という相対的な評価基準ではFランとされる大学が増える傾向がさらに強まっているという。
例えば、河合塾のランキング表などを参照すると、10数年前から九州地方の私大では、西南学院大学、福岡大学、久留米大学、立命館アジア太平洋大学以外はすべて“Fラン”に当てはまる。ちなみに九州地方には約80校の大学がある。入試の多様化や一般選抜試験における競争の喪失によって、相対的にFランが増えるという現象が全国で起きている、と後藤氏は言う。
「米国では選抜機能が残っている大学は約14%と言われています。日本も全入化が進み、志願すれば誰でも入れる大学が増えれば、偏差値が象徴する選抜機能はさらに衰えていくでしょう。日本では2025年度にいったん受験人口は増えますが、その後4年間ほど上下した後、以降は右肩さがりになります。団塊ジュニアのピーク時の出生者数は約205万人ですが、2021年は約80万人です。約110万人で全入化が加速するとされていたので、今後さらに人口が減るとなれば、ほとんどの大学で偏差値による競争はますます減ります。日本の高等教育の大局をみると、偏差値やFランという言葉が持つ意味がどんどん失われているのです」(後藤氏)
なお前出のA氏は、Fランというレッテル貼りには東京などの「大都市が抱える地方への先入観」も内包されているのではないかと指摘する。
「近年、地方大学の中でも、東京在住者が想像で見下しているよりも経営努力や教育の改善を重ねて実際は上を行っている大学が、各地方に存在しています。入学する一番下の学生たちの合格最低点が低いので、全体として偏差値が低くみえるのですが合格者の全体の分布を見ると決して、そうではありません。優秀な高校生がみな恵まれた環境で東京の大学に行くというのは、大都市における幻想になりつつあります。自身の人生設計および選択、もしくは家計の問題などで、いわゆるFランと呼ばれていた地方大学に進学してくる学生も増えています」(A氏)
A氏によれば、学生たちを採用する企業も、大学の偏差値という基準がそれほど意味をなさないものであると気づき始めているという。
「たしかに“学歴フィルター”を機能させている企業もまだまだ残っているでしょう。しかし、多くの大手企業はすでに偏差値のからくりやFランと呼ばれる虚構の実情も理解しており、地方大学に入学後に熱心に学び優秀な成績を収める学生がいることにもかなり前から気づき始めています。実際、採用の動きは非常に多様かつ活発です。『地方のFランだから就職できない』というレッテルも、すでに現実を反映したものではなくなりつつあります」(A氏)
偏差値教育が機能しなくなる中で、Fランという言葉に失望する理由も失われつつある。当然ながら、Fランを見下すことで優越感を得られた時代も終わりを迎えようとしているのだ。
後藤健夫(ごとう・たけお) 教育ジャーナリスト・大学コンサルタント。河合塾の職員を経て独立。大学等でのAO入試開発や入試分析・設計など大学コンサルタントとして活動。早稲田大学法科大学院設立にも参画。高等教育や大学入試に関連した記事を執筆している。
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