香取慎吾にとにかく“イラッ”とする。でも、自分はどうだろう?『犬も食わねどチャーリーは笑う』
#映画 #香取慎吾 #岸井ゆきの
“チャーリー”の正体は?
そうやって、どんどんと夫婦の溝は深まっていく。そんな“ある夫婦”の日常を描いている本作は、決して特別な物語ではない。少し悲しくもなってしまうが、ごくごく一般的な夫婦の物語といえるのかもしれない。
しかし、そんな夫婦の姿は、俯瞰的に見ると、実は滑稽で皮肉的だったりもする。当事者でない場合は、それが喜劇にも思えてしまう。
今作のタイトルにもなっている”チャーリー”とは、ペットのフクロウの名前である。チャーリーは夫婦を観察しており、「人間はいつまでも同じ過ちを繰り返している」というふうだが、観客も、チャーリーの視点から夫婦を眺めている感覚になるように演出されているのだ。
しかし、ふと気づくと、「自分とパートナーはどうなのだろうか」と自問自答しているのと同時に、田村夫婦に上手くいってほしいと心から思えてくる。互いに罵りあって、傷つけあっても、それはちょっとした気持ちの行き違いであって、好き合った相手を本気で拒絶はしていないことが伝わってくるからだ。
本気だけど、本気ではない。そんな2人の姿を見ていると、自然と「もっとブラックな展開になってほしい」とは思わない。夫にも妻にも、反省する部分があるかもしれない。自分自身を省みると同時に、少し優しい気持ちになれる、ハートフルな作品ともいえるのだ。
冒頭で、香取の演技について少しだけ述べた。『凪待ち』(2019)や『人類資金』(13)のようにボソボソとしゃべる役か、その真逆で『西遊記』(07)や『こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE ~勝どき橋を封鎖せよ!~』(11)のように、無駄にハイテンションな役のイメージが強い香取。彼がその中間、いわゆる“普通”な役のリズムでセリフをしゃべる作品は意外とめずらしい。実際、所々に気になる部分はあったものの、それが逆に裕次郎の“普通感”を演出していた。作品の趣旨通りに、ちゃんと”イラっ”とさせてくれているのだから、ナイスなキャスティングだったといえるだろう。
『犬も食わねどチャーリーは笑う』
9月 23日(金・祝)、TOHO シネマズ 日比谷ほか全国公開
出演:香取慎吾、岸井ゆきの、井之脇海、中田青渚、小篠恵奈、松岡依都美 田村健太郎、森下能幸、的場浩司、眞島秀和ほか
監督・脚本:市井昌秀(『台風家族』)
配給:キノフィルムズ/木下グループ
公式HP:inu-charlie.jp
公式Twitter:@inucha2022
©2022 “犬も食わねどチャーリーは笑う”FILM PARTNERS
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