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宮崎駿から拒絶された細田守がデジタルを武器にたどり着いた『竜とそばかすの姫』

宮崎駿から拒絶された細田守がデジタルを武器にたどり着いた『竜とそばかすの姫』の画像1
竜とそばかすの姫』ウェブサイトより

 金曜ロードショーは7月8日に放送予定だったが延期になっていた『竜とそばかすの姫』を改めて放送します。映画については以前に公開された記事の方をご覧いただきたい。今回は別の視点から本作を探ってみたい。
 
 


 
 監督の細田守は、宮崎駿以降の時代を担うとも言われている国民的アニメ監督。細田が宮崎と違う点はデジタル世代ということだ。
 
 細田の名を世に知らしめた『劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』は、インターネット上の仮想現実世界が舞台。宮崎がいかに国民的監督だといっても戦争を経験した世代には、電脳世界は描けないだろう。パソコン嫌い(とうかコンピューター全般)で知られる宮崎監督がいるためにジブリは、アニメの制作がパソコンに移行していく時代が来てもなかなかパソコンを導入できず、鈴木プロデューサーがワープロに似たパソコンを大量に仕入れて「あれはワープロです」と誤魔化してジブリにパソコンを入れたという話は、笑っていいのかなんというか(宮崎監督はファミコンですら嫌っていたのに、ワープロだけは「字が奇麗に出る」とかいう理由で認めていたという……)。
 
 細田守はスタジオジブリが高畑勲の『おもいでぽろぽろ』を作る時、スタッフを募集しており、大学を卒業し就職先を探していた細田はジブリの採用試験を受け、最終選考まで残るも結果は不合格。不合格通知には他に一枚の紙が入っており、それは宮崎駿直筆の手紙だった。
 
 そこには「自分の思うように作品をつくるほうが、君には向いている」というような内容が書かれていた。「ジブリの中で誰かの言われるがままでいるより、君のやりたいことをやれ」という、大監督からのエールだ。それでも細田は落ちたことが悔しくて雑用でもいいから入れてくれと食い下がるも、電話口で「宮さんが今回の試験を受けた中で手紙まで出したのは二人だけ、そのうちの一人が君だからあきらめなさい」と言われたそうな。
 
 今聞くとグッとくるエピソードなんだが、当時の細田は「なんだコノヤロー」と思ったという(笑)。でもそのままジブリに入っても、パソコン嫌いの宮崎監督がいたんじゃあ『サマーウォーズ』はつくれなかったかも。
 
 が、そんな細田にジブリ作品の監督を任されるチャンスが来た。『ハウルの動く城』である。

© 2004 Studio Ghibli・NDDMT

 東映アニメーションで前述した『ぼくらのウォーゲーム!』で注目された細田は、東映アニメから出向する形でジブリへ。細田が推された理由は、細田作品を観て気に入った宮崎監督のご指名だったという。まさか『ぼくらのウォーゲーム!』を観たの? パソコン嫌いなのに!?
 
 当時の宮崎監督はやたらと引退を匂わせていた頃で、ジブリは高畑、宮崎に代わる新しい人材を育成しようとしていた。
 
 宮崎から細田へ、国民的アニメ監督本人による禅譲になるかもしれなかったこの企画は、みなさんご存じのように頓挫してしまう。降板の理由についてはさまざまなうわさ話が伝わっているが、よく言われるのが「宮崎駿からのプレッシャー」だ。
 
 宮崎監督は『耳をすませば』で初監督をした近藤喜文にも、激しいプレッシャーを与えて苦しめたと言われており、かつて「自分の思うような作品を作るほうが向いている」とエールを送った細田にも、容赦ないプレッシャーをかけたのだろうか? ひょっとしたらパソコン嫌いな宮崎監督が『ぼくらのウォーゲーム!』にイチャモンをつけたのかも……。
 
 真相は本人にしかわからないが、ジブリで国民的アニメ監督になる未来はなくなった。しかし『時をかける少女』『サマーウォーズ』をヒットさせた細田は「自分の思うような作品」をつくるための会社、スタジオ地図を設立、宮崎駿の後を継ぐ次代の国民的アニメ監督になった。『竜とそばかすの姫』では代表作の『ぼくらのウォーゲーム!』『サマーウォーズ』と同じ仮想現実世界を舞台に似たテーマ、モチーフを繰り返す。同じテーマを何度も繰り返し描きアップデートすることこそ大作家といえよう。
 

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