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アルツハイマー病に有効な超音波治療、東北大が発表 重症狭心症治療技術応用

アルツハイマー病に有効な超音波治療、東北大が発表 重症狭心症治療技術応用の画像1

「アルツハイマー病」は世界中に多くの患者がいるにも関わらず、未だに有効で安全な治療法がない。東北大学の研究チームは9月16日、アルツハイマー病に有効な超音波治療を開発したと発表した。
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2022/09/press20220916-03-alzheimer.html

 アルツハイマー病の治療に使われたのは、低出力パルス波超音波という人間が聞くことのできる周波数を超えた超音波。パルス波は連続的に音波を発信し続ける連続波とは対照的に、断続的に音波を発信する照射方法で、体内の機械的振動によって生じる熱の発生を抑
えられるため、連続波よりも高い強度での照射が可能になる。

 研究チームでは音波が生体に与える自己治癒力の活性化作用に着目し、01年から低出力衝撃波に血管新生作用等の治療効果があることを示し、09 年から超音波を用いた治療法の開発に着手。特殊な条件の低出力パルス波超音波による、重症狭心症に対する低出力体外衝撃波治療を開発した。

 この治療はすでに、日本では10年に厚生労働省から先進医療に指定され、これまでに世界25カ国で1万人以上の重症狭心症患者の治療に使用され、有効性と安全性が確認されている。

 この成果をもとに、14年から認知症の治療への応用も開始し、18年に低出力パルス波超音波治療がアルツハイマー病および脳血管性認知症2つのマウスモデルで、有効で安全であること、血管拡張因子である脳内の一酸化窒素を増加させることを明らかにした。

 動物実験では、一酸化窒素が脳内で低下していることが認知機能低下の原因になっていることが示され、研究グループは低出力パルス波超音波治療が微小血管の内皮細胞において内皮型一酸化窒素合成酵素の発現を亢進させ、結果的に一酸化窒素の産生亢進を介して微小循環障害を改善させることを証明し、動物モデルでの有効性を示した。

 この結果を受け、18年から東北大学病院で早期アルツハイマー病の患者を対象に、世界初の超音波治療の医師主導探索的治験を実施した。

 治験はヘッドギア型のプローブを患者の両側のこめかみに装着し、20分間の全脳照射を 5分間の休憩をはさんで計3回、合計60分間実施。この60分間の治療を隔日で3回実施し、これを治療期間1クールとした。

 探索的治験では、主に安全性を確認するロールイン治験と有効性と安全性を検討するランダム化比較試験を行った。ロールイン治験は1クール、ランダム化比較試験は3か月の間隔を置いて合計6クール、計1年半の治験を行った。

 ロールイン治験では5名全員が問題なく1クールを終了したが、ランダム化比較試験では、当初40名を登録する予定だったが、新型コロナウイルスの影響のため、22例で登録を終了した。この22例は登録時に無作為に2群に分けられ(各群11例)、低出力パルス波超音波治療群は10例が治験を完了し、プラセボ(偽薬)群は5例が追跡を完了した。

 この治験の結果、低出力パルス波超音波治療は早期アルツハイマー病患者に対して安全であり、また有効である可能性が強く示唆された。さらに、治療回数が増えるにつれて有効例の割合が増加し、低出力パルス波超音波治療の効果が長期に蓄積して、認知機能の悪化を遅らせるだけではなく、むしろ改善させる可能性が示唆された。

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