『全力坂』なにげに17年続く長寿番組に―唯一無二となった秘訣は『エロ目線』?
#深田憲作 #企画倉庫 #アレのどこが面白いの?~企画倉庫管理人のエンタメ自由研究~
放送作家の深田憲作です。
「企画倉庫」というサイトを運営している私が「あの企画はどこが面白いのか?」を分析し、「面白さの正体」を突き止めるための勉強の場としてこの連載をやらせてもらっています。
今回のテーマは「長寿ミニ番組の『全力坂』について」です。
『全力坂』はテレビ朝日で深夜に放送されている番組。番組といっても枠としては6分で、挟まれるCMを除くと実際に流れる時間は1分以内。このような番組を「ミニ枠」「ミニ番組」といった呼び方をします。ちなみに、ミニ番組で他に有名なのだと『世界の車窓から』(テレビ朝日系)『キューピー3分クッキング』『音のソノリティ~世界でたった一つの音』(共に日本テレビ系)などがあります。『全力坂』が放送開始されたのが2005年4月なので、17年続く“長寿ミニ番組”です。
『全力坂』の内容は読者の方もご存じですよね。若い女性(近年は男性のケースも)が東京にある坂を全力で走って駆け上がる。ただそれだけです。走る時間は約45秒。それだけの企画が17年も続き、国民の大半に認知されているのです。企画の理想はシンプル・イズ・ベスト。『全力坂』はまさにそれを体現した見事な企画と言えるでしょう。
ただ、もし自分が裁量権を持ったプロデューサーだったら、この『全力坂』の企画を部下から提案された時に乗っかれるかどうかは自信がありません。
「女性が坂を走るだけって、面白そうだけど……本当に大丈夫か?」
「2~3回見る分には面白いけど、すぐに飽きちゃうんじゃない?」。
そんな不安がよぎって採用のハンコを押せない気がします。
しかし、実際のところは『全力坂』は放送回数が3000回を超え、多くのバラエティ番組にパロディをされるほど強いインパクトを与えています。特別版として、SMAP時代の木村拓哉さんまでもがチャレンジしています。これらを鑑みてもテレビ史に残る名企画の1つと言ってもいいのではないでしょうか。
テレビ番組の制作に携わっていると「なんであの企画が高視聴率を獲るんだろう?」「なんであれが人気になるんだろう?」という、理由が明確に分からないものに遭遇します。『全力坂』はこれに分類される気がします。これは「どこが面白いの!?」「意味が分からない!」といったディスの気持ちではなく、むしろ称賛やお手上げの気持ちです。
なぜなら、面白さが明確に解明できないということは他者による再現性が低いからです。他が再現できないということは「ここでしか見られない唯一無二の企画」ということ。これこそ名企画の本質だと思います。
では『全力坂』のどこが面白いのか? なぜ見てしまうのか? 考えてみました。
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