宮崎駿らから影響を受けた『秘密の森の、その向こう』の「仏実写版ジブリ」的魅力
#ジブリ #ヒナタカ
当たり前のことを見つめ直す意義
『秘密の森の、その向こう』における「同い年の頃の母と出会い友情を育む」なんてことは、もちろん現実にはあり得ない。だが、それは多くの人が現実の自分自身に置き換えて想像することができる、親子の関係を見直すことにもつながる、とても普遍的で面白いテーマだ。
「母親も子どもの頃の自分と同じ年齢だったことがある」というのは、もちろん世界中の全ての人に共通している、当たり前のことだ。だが、それを感覚として理解することは難しいし、そもそも考えたこともないという方がほとんどだろう。その当たり前を、美しい映像で提示して、とことん見つめ直すことこそ、本作の意義なのではないだろうか。
ちなみに、シアマ監督は本作の脚本を、世界がコロナ禍に突入した後、フランスのロックダウンが終わった頃に本格的に書き始めたのだそうだ。そこには「近年、子どもたちは大きな危機とたくさんの苦難に直面している。彼らは世の中に広がる不満を聞き続けている」「だから私たち大人は、子どもたちを輪に入れ、子どもたちに物語を聞かせ、 子どもたちと協力することが重要だと思った」と、早急にこの物語を作る必要性にかられていた理由も語っている。
その想いは、間違いなく作品に結実している。『秘密の森の、その向こう』は、「子どもが子どもを観る視点」で、子どもの気持ちにとても真摯に寄り添った映画なのだから。その作り手の意志は、きっと「かつて子どもだった大人」にも響くことだろう。
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9月23日(金・祝) ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ他 全国順次ロードショー
監督・脚本:セリーヌ・シアマ『燃ゆる女の肖像』
撮影:クレア・マトン『燃ゆる女の肖像』
出演:ジョセフィーヌ・サンス/ガブリエル・サンス、ニナ・ミュリス、マルゴ・アバスカル
提供:カルチュア・エンタテインメント、ギャガ 配給:ギャガ
原題:Petite Maman/2021/フランス/カラー/ビスタ/5.1chデジタル/73分/字幕翻訳:横井和子/映倫G
C) 2021 Lilies Films / France 3 Cinéma
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